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なぜアメリカには熱心なキリスト教信者が多いのか。シンプルな答え

橋爪大三郎の「社会学の窓から」⑤

世界のキリスト教はどうなっている?

アメリカは、不思議な国である。とくに不思議なのは、キリスト教。なぜあんなにアメリカ人は、キリスト教を熱心に信じるのだろう?

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アメリカ人は、3億人。ざっとみて、1億人/1億人/1億人に分かれている。

最初の三分の一は、キリスト教なんかもう関係ないや、という人びと。科学を信じる合理主義者で、ビジネスをやって、禅やヨガやニューエイジにも理解のある進歩派だ。

つぎの三分の一は、主流派の人びと。健全な常識人で、教会にもおおむね出席する、穏健なクリスチャンだ。

最後の三分の一は、福音派(エヴァンジェリカル)と呼ばれる人びと。聖書は「神の言葉」だと、信じている。進化論や天文学は間違っている、と決めつける極端な人びとも、なかにはいる。この福音派が最近、アメリカ政治の台風の目になっている。

 

そもそも西欧社会は、キリスト教を中心に発展してきたのだった。神学から、哲学が生まれ、哲学から、自然科学が生まれた。文化芸術も生まれた。民主主義や資本主義も生まれた。ただ、ヨーロッパの国々では,信仰の熱はとっくに冷めて、キリスト教は歴史の一部(日本の仏教のよう)になっている。アメリカは、例外なのだ。

いちばん冷えきっているのは、フランスだろう。元はカトリックだが、フランス革命で、縁が切れた。教会の建物は立派でも、日曜日はガラガラ。礼拝に行くのはいま、人口の10%足らずだ。フランスは、哲学の国になった。知識人は、信仰を持たないことを誇りにしている。

イギリスは、英国国教会。おとなしい。ピューリタンがかつて大暴れしたのが嘘のようだ。

ドイツは、ルター派。公定教会(経費を税金で払ってもらう)なので、体制化している。ヒトラーに協力した過去をひきずってもいる。イタリア、スペイン、ラテンアメリカの国々は、カトリックだが、習俗や伝統の一部みたいになっている。

これらの国と比べると、アメリカのキリスト教は元気だ。まじめに信仰している人びとが多い。

ビリー・グラハムみたいな伝道師が大勢いて、万単位が集まるメガチャーチもある。キリスト教系の新興宗教(モルモン教、エホバの証人、クリスチャン・サイエンス、…)もたくさんある。社会的な活動も活発だ。公民権運動でも、キング牧師が大きな役割を果たした。