元経済ヤクザが分析「米中代理戦争は、この地で起こる可能性」

私のもとには、彼らの悲鳴が届いている
猫組長(菅原潮) プロフィール

拮抗が生み出すものこそ代理戦争

人類初の核兵器使用によって終結した第二次世界大戦以降、大国間は核抑止力によって直接戦争ができない状態になる。しかし、戦後訪れた米ソ冷戦という拮抗の中で平和が維持されたわけではない。朝鮮戦争(1950年~)、キューバ危機(62年)、ベトナム戦争(55年~75年)など、大国間の武力衝突は第三国を舞台にした代理戦争へと形を変えた。

現在、この代理戦争勃発のリスクが急速に高まっているのが、サウジアラビアとイランだ。私の元には何人かのイランの富裕層から、「日本のビザ取得」や「亡命」を希望する声が届いている。

きっかけは12月19日に発表された、アメリカ軍のシリア撤退だ。複雑な中東情勢を一つ一つ整理しよう。

米軍がシリアに駐留した建前は、「IS(イスラム国)掃討」だ。しかしシリアのアサド政権を支援するのは、アメリカが核開発問題を理由に経済制裁を実行しているイランとロシア。米軍のシリア駐留は、この2つ敵の影響力をシリアから排除すること、すなわちアサド政権を倒す目的でもあった。

そこで利用されたのがクルド人だ。

 

シリア、イラク、トルコの山岳地帯に3000万人が住むというクルド人は、国家を持たない世界最大の少数民族で、分離独立を求めては弾圧される悲劇の民族だ。シリアでのクルド人にとっては、自らの居住区を侵略するISも、アサド政権も敵という構図だ。米軍はベトナム戦争以来、現地の少数民族に軍事教育や武器支援を行っているが、シリアにおいては、目的を同じにするクルド人を中心とする民兵組織「シリア民主軍(SDF)」を支援した。

しかしアメリカ製の武器を大量に買い付けてくれるわけでもない組織への支援は、トランプ氏にとって魅力的には映らなかった。米軍の撤退は、シリアをロシアとイランに明け渡すだけではなく、米軍を信じたクルド人を見捨てることになる。味方の見殺しが、生粋の軍人であるアメリカ国防長官、ジェームズ・マティス氏(68)には許すことができなかった。彼は昨年末、この決定を機に辞表を出した。

日米合同演習などで接点のある日本の幕僚の多くは、マティス氏を「ソルジャー・オブ・モンク(僧侶)」と呼び、「マッド・ドッグ」のあだ名とは逆の理性的で知的な素顔に、強い尊敬の念を抱いているという。マティス氏はシリア撤退への抗議で辞任したが、辞表に書かれてあった「同盟国への敬意」とは、今回の裏切りから生まれる同盟国のアメリカ不信だけではなく、「見捨てられたクルド人に対する苦悩の表れ」と、ある幕僚関係者はみる。

しかしこの見方は、愛国者で「モンク」と呼ばれる人物が辞任する動機としては弱いと私は考えている。

そこで、重要になるのがシリア撤退で誰が得をするのかという分析だ。