あなたの老後を救う「住まいのトリアージ」とは何か

家を解体する?それとも誰かに貸す?
野澤 千絵 プロフィール

また、解体後の土地を「売る」のか、「貸す」のかについても考える必要がある。
跡地を「売る」場合に情報収集すべきことは、どのような不動産会社があるか、である。

跡地を「貸す」場合の主な用途としては、立地にもよるが、月極駐車場、コインパーキング、レンタル倉庫、賃貸アパートなどがあり、どのような土地活用法があるのか、どのような土地活用事業者があるかについて検討する必要がある。

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特に、事業用として跡地を「貸す」場合には、事業者からの提案内容をきちんと精査し、長期的な事業採算性や契約内容をよく理解し、人口・世帯数が減少していく中での事業リスクやトラブルに巻き込まれないようにするための基礎知識の習得が必須となる。

跡地をしばらく保有しておきたいという場合、暫定的に、近隣住民等が菜園として無償、あるいは低額で「貸す」という選択肢もある。これは、菜園利用者に土地の管理をしてもらえるというメリットがある。

こうした利用方法が選択肢として考えられる場合には、相続が発生する前の段階から、近隣住民や地域コミュニティの園芸サークルなどに菜園として借りたいというニーズはないかなどのリサーチをしておくのもよいだろう。

なお、上記以外に、民間市場で流通性がある物件・エリアのマンションや、民間市場で流通性が低い物件・エリアにおいて住まいを「終活」する場合に、あらかじめ、どのような事業者や相談先について情報収集をしておくべきかについては、拙著『老いた家 衰えぬ街~住まいを終活する』で紹介している。

 

「衰えぬ街」の価値を生み出す

既にお気づきだと思うが、今後、住まいを「終活」するにあたって非常に重要なことは、信頼できる事業者やコーディネーターとなってくれそうな専門家をリサーチしたり、地域との人的ネットワークを事前につくっておく、ということなのだ。

例えば、徳島県の神山町の移住交流支援を手掛けるNPO法人グリーンバレーでは、所有者自身が他界した後に、自分の家を地域で活用してもいいよという意思を事前(生前)に登録することができる画期的な取り組みをしている。

こうした活動は、相続が発生する前であれば、その住まいに住まう世代と地域とのつながりがあるため、ご近所同士の情報網を駆使して、自分たちの状況に合った相談先探しに時間をかけることができるというメリットがある。

これまで、筆者は全国各地の様々な問題空き家の調査や実際に「空き家トリアージ」を試行してきた中で、今最も求められるのは、私たち一人ひとりが老いた家の終末期について問題を先送りにしないこと――それが最終的にみんなが救われるということを痛感している。

私たち一人ひとりが「住まいの終活」をすることは、今あるまちに新たな所有者・利用者が流入できる「素地」をつくることに他ならない。その結果、まちの世代交代を促し、ひいては次世代にとっても引き継ぎたいと思える「衰えぬ街」の価値を生み出すことにつながっていく。

今、私たちが住む時代は、昔のように、先祖代々の家を引き継ぎ、住み続けていくケースが少ない。要するに、多くの人が、いずれ住まいを「終活」するという場面に遭遇することになるのは確実なのだ。

それならば、老いた家の終末期について、私たち一人ひとりが問題を先送りにせず、住まいを次の所有者・利用者へスムーズに引き継げるよう、あらかじめ条件整備や情報収集を行い、老いた家の終末期の見通しを立てることで、様々な将来リスクに備えておくべきではないか。


(*1)拙稿において、住まいを「終活」するとは、相続が発生する前の時期から、住まいに関わる様々な情報を所有者やその相続予定者が整理・共有し、相続発生後の選択肢を考え、安心して相談できる人的なつながりをつくるなど、住まいを円滑に「責任ある所有者・利用者」へ引き継ぐことを目的にした一連の活動と定義している。
(*2)トリアージとは、「選別」を意味するフランス語に由来した言葉。実際に、2014年6月の「Detroit BlightRemoval Task Force Plan 」の中で、「STRATEGIC ASSESSMENT TRIAGE TOOL (SATT) 」 「トリアージ」という言葉が使われている。
(*3)住宅用地には、固定資産税の軽減措置があり、課税標準額は、200㎡以下の住宅用地では評価額の6分の1、200㎡を超える部分は3分の1に減額される。しかし、空家法に基づき「特定空家等」に認定され、是正指導・助言に従わない土地は、こうした軽減措置の対象から除外される。空き家解体後の非住宅用地も負担調整措置により評価額の7割を上限に減額して計算されるため、固定資産税は実質3~4倍になるとされている。