客家・鄧小平の遺産を失った中国共産党の「哀しき運命」を読む

たとえ米中貿易戦争がなかったとしても
大原 浩 プロフィール

国民とともに豊かにならぬなら…

鄧小平が毛沢東と対立して何度も失脚しても、不死鳥のようによみがえった背景には、客家人脈である人民解放軍の存在がある。

客家は、政治家として活躍しているだけでは無い。被差別民族ということもあって、それがハンディ・キャップになりにくい軍隊や警察に就職する傾向が顕著だが、その彼らが政治家の客家たちを後押しする側面もある。

まず、中国人民解放軍の「建軍の父」と評される朱徳が客家である。また、中国人民解放軍の創設者の1人である葉剣英とその息子で人民解放軍の実力者葉選平もそうである。
 
その他、人民解放軍の要職には数え切れないほどの客家が存在する。この人民解放軍の客家人脈に守られていた鄧小平には、さすがの毛沢東も手出しができなかったのだ。

そのような客家人脈に守られて鄧小平は改革開放を大成功させたが、注意しなければならないのは、鄧小平はリー・クワンユー同様「自由主義者」ではなくむしろ「独裁者」であるということである。

天安門事件で、西側推計で数千人もの中国人民を戦車で引き殺すなどして惨殺した首謀者であることを忘れてはいけない。しかし、そのような独裁者ではあっても、リー・クワンユー同様に、自らも厳しく律する客家の伝統を受け継いだために、国民の支持を得ることができたのだ。

国民とともに豊かになるという客家の伝統を受け継いだ鄧小平路線を否定し、毛沢東路線を推進する現在の共産党政権は、腐敗によって没落してきた古代からの中国の数々の王朝と同じ運命をたどるに違いない。

 

崩壊と繁栄と

ただし、共産主義が崩壊しても、世界の客家(華僑)ネットワークは繁栄する。

例えば、改革開放の真の立役者は、共産主義革命の前に世界に華僑として散った客家たちである。「市場」が一体どのようなものかさえ理解できない、共産主義国家の人々に一から商売の手ほどきをしたのは、客家を中心とする華僑たちである。

海外からやってくる華僑系企業が風水を極めて重要視するのに、過去の文化をすべて破壊した共産主義中国には風水のわかるものが皆無であった。仕方が無いので、中華民国(台湾)やシンガポールの風水師を雇って教えを乞うたという笑い話のような本当の話もある。

したがって、共産主義中国は華僑の客家ネットワークの支援が無ければ成り立たない。

もともと、シンガポールは共産主義中国に強い警戒心を持っており、友好的な顔を見せながらも激しい駆け引きを行ってきた。

自由主義の砦であった香港や台湾にも魔の手が忍び寄っている。そのように、共産主義中国が北朝鮮化する中で、崩壊の足音が聞こえる。

しかし、客家を中心とする華僑ネットワークは、それらとはほぼ無関係に、そのたぐいまれなるビジネスセンスを生かして、新たなる市場を開拓し繁栄するはずである。