死に至る病「エボラ」から世界を救う…日本人ウイルス学者の奮闘記

あの恐怖から5年
萱原 正嗣 プロフィール

髙田教授らがアフリカでコウモリを捕まえるのはなぜか。それは、エボラウイルスの「自然宿主」と有力視されているコウモリを捕まえ、エボラウイルスの感染状況を調査するためだ。

エボラ出血熱は、動物が運ぶ病原体ウイルスがヒトにも感染する「人獣共通感染症」だ。「自然宿主」とは、人獣共通感染症における重要な概念で、人間社会への病原体供給源となる野生動物、すなわち病原体を運ぶ動物のことを指す。

その有力候補と見られているコウモリを、髙田教授らはジャングルや洞窟に分け入り、長柄の捕獲網や罠を仕掛けるなどして捕まえてきた。

エボラウイルスに感染しているかもしれない野生動物と対峙する命がけのフィールドワークを、十数年にわたって続けてきたのである。

 

筆者が同行した調査では、コウモリがいる洞窟の入り口に罠を仕掛けた。夜になってコウモリが洞窟から外へ出ようとすると、罠にかかるという単純な仕組みだ。

日が沈み、辺りが夜陰にまみれて来た頃合いを見計らい、防護服を来た研究者の一団が、仕掛けた罠の様子を窺う。

いる──。罠の中には、幾頭ものコウモリが蠢いていた。

続いて、罠の中からコウモリを取り出し、1頭ずつカゴに移し替える作業が行われた。コウモリに直接触れる人は、分厚い革手袋をしている。

仕掛けた罠にかかったコウモリ

コウモリがエボラウイルスの自然宿主であると決まったわけではないが、コウモリはさまざまな病原体を運ぶことが知られている。噛みつかれたり引っかかれたりした際に、それらの感染を防ぐためだ。

研究チーム一団は、この日、40頭弱のコウモリを捕獲した。

「そう簡単には感染しない」

翌日の午前中、髙田教授らの共同研究先であるザンビア大学獣医学部のラボで、コウモリの採血作業が始まった。

手早く麻酔をかけてコウモリを眠らせ、注射器を使って血を抜き取る。複数人で手分けして、ほぼ午前中で40頭弱の採血が終わると、午後には解剖作業が行われた。

髙田教授は、エボラウイルスに感染しているかもしれないコウモリを扱うことに、恐怖を感じていないのだろうか。そう尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「根底には、『そう簡単には自分は感染しないし、感染しても死ぬことはないだろう』という気持ちがあります。致死性病原体の研究者は、誰しも程度の差こそあれ、そういう心持ちで研究に臨んでいるはずです」

楽観的にも聞こえるこの発言には、れっきとした根拠がある。

エボラウイルスは、伝播力がそれほど高いウイルスではない。感染経路は、感染個体の体液や吐瀉物などに直接触れたときに、目に見えない微細な傷から病原体が入り込む「接触感染(直接感染)」に限られる。

つまり、それさえ気をつけていれば、ウイルスをことさら恐れる必要はないのだそうだ。

とはいえ、捕まえたコウモリを扱う際には注意も必要だ。