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「住まいのない生活保護利用者」は一体どこで暮らせばいいのか

「施設」が終の棲家になることも…

生活保護利用者の「施設」

東京の山谷、大阪の釜ヶ崎など、かつて日雇い労働者の街と呼ばれた地域を歩いていると、「○○屋」「ホテル○○」「○○荘」といった、いわゆる「ドヤ」と呼ばれる簡易宿泊所(旅館)が立ち並ぶ。

過去には数万人とも言われた日雇い労働者の宿泊場所として、また、生活の拠点として大きな役割を担ってきたこれらの街に、数十年前ほどの活気はない。

もちろん、現在でも日雇い労働者はこれらの地域に多く居住しているが、往年に比べるとその数は圧倒的に減少していると言っていいだろう。

そういった時代の変化とともに、多くの簡易宿泊所が廃業したり、改装して値段を上げて客層を変えたり、外国人のバックパッカー向けのゲストハウスになったりと、様変わりしている。

一方で、かつての日雇い労働者たちが高齢になり生活保護を利用するようになるにつれ、住まいのない生活保護利用者の宿泊場所、生活の拠点としての役割を担うことになったドヤも多くある。

また、旅館は廃業し、社会福祉施設等に改装して、住まいのない生活保護利用者の「施設」として運営されているところもある。

これらの街の多くは、現在では、生活保護利用者が多く居住する地域となっている。

一方で、当たり前だが、日雇い労働者やその経験者のみが、生活困窮するわけではない。住まいを失う理由も人それぞれだ。住み込みの仕事が切れて寮から出された人もいれば、離婚や家族との離別により住まいを失った人もいる。

それらの人は、あらゆる地域、自治体に存在しているし、そういった状況になれば、生活の困窮の度合いによって生活保護をはじめとしたさまざまな公的支援を利用できる。

住まいを失ったときに、資力があれば自分でアパートを借りるなり宿泊先を確保するなりできるだろう。家族や友人を頼れる人は、そのつてを使ってお世話になるという方法もある。

しかし、それらを持たない人のために、住まいのない生活困窮者を支援する目的で、生活保護制度や生活困窮者自立支援制度などの、いくつかの諸制度が存在する。

制度によって細かな違いはあるが、一時的な「住まい」を公的な支援の枠組みのなかで提供する、もしくは民間の宿泊先を利用するために費用を援助する、という形になる。

例えば、生活保護制度の場合、救護施設や更生施設などの公的な施設が存在する。しかし、そういった公的な施設のみでは特に大都市圏における受け皿として足りず、民間の簡易宿泊所や民間の「施設」が受け皿としての役割を担っている。

民間の「施設」は、1990年代の後半以降に、少しずつ拡大していった。そして、これらは必ずしもドヤ街などの特定の地域に偏って存在するのではなく、都内などであれば23区のほぼすべての自治体に複数個所の「施設」が存在していると言っていい。

そして、かつては劣悪な環境のところも多く、「貧困ビジネス」と批判されたところも多かったが、現在ではその環境の悪さは徐々に軽減されつつある。

前置きが長くなったが、今日はこの住まいのない生活保護利用者の宿泊場所、生活の拠点となっている民間の「施設」について考えていこうと思う。なぜなら、こういった「施設」についての考え方が大きく変容しようとしているからだ。

 

厚労省の検討会がスタート

いま、住まいのない生活保護利用者のためのこの民間の「施設」について、厚労省が「社会福祉住居施設及び生活保護受給者の日常生活支援の在り方に関する検討会」という有識者会議を開いている。

2018年11月5日に第一回、12月17日に第二回が開催された。

開催要綱によれば、検討する内容は以下ということだ。

(1)社会福祉住居施設(無料低額宿泊事業)の対象範囲
(2)社会福祉住居施設の設備、人員、運営に関する基準の在り方
(3)無料低額宿泊所等における住宅扶助基準の面積減額の適用の在り方
(4)日常生活上の支援が必要な者の範囲の考え方
(5)日常生活上の支援の内容
(6)日常生活支援住居施設の認定基準の在り方
(7)日常生活支援の委託の在り方

わかりにくいので少しくだいて言うと、要するに民間の「施設」についてのハード面(面積や設備等の環境)とソフト面(生活の支援)について、基準やルール、内容を考えましょう、というものだ。

ちなみに、検討会の委員は13名。内訳は、学識経験者(大学教授など)が5名、自治体関係者が2名、NPOなど実際の「施設」運営者が6名となっている。

「施設」の運営者がこういった基準作りやルール作りにおいて大きな発言力をもつことについては正直に言って違和感はある(それぞれの委員の現場での支援活動へのリスペクトとは別にして)。

ただまず、その違和感を説明する前に、こういった「施設」の現状を紹介しよう。