ひとつ間違えれば命を失う…多剤服用はこんなに怖い

NHK『あさイチ』でも指摘 
週刊現代 プロフィール

奈良県に住む牛尾奈々子さん(72歳・仮名)はこう語る。

「持病の高血圧に加えて、腰痛や神経痛で身体の節々が痛んでいました。また、トイレが近く夜中に何度も起きて、寝付けない。年のせいだとは思いつつも、やっぱりつらくなって複数の病院に通って、薬を処方してもらっていました」

降圧剤、鎮痛薬、過活動膀胱を抑える薬。そして、それぞれ「薬で胃が荒れる」として、異なる胃薬が4種類も処方されていた。牛尾さんが飲んでいた薬は、合計で14種類にのぼる。

「ある日、夜中にトイレに起きて階段を下っていたところ、急にガクッと全身の力が抜けて、そのまま階段から落ちてしまったんです。

救急車で病院に運ばれて、事情を説明したところ、脱力する症状は薬の相互作用からくるものではないかと診断を受けました」(牛尾さん)

 

認知症のような症状が

年齢を重ねて代謝が落ちると、飲んだ薬の成分が身体から抜けにくくなる。そこに新たな薬を飲み合わせると、相互作用で薬が効きすぎたり、副作用が強く出ることがある。

これは、たとえば糖尿病と解熱剤など異なる薬の組み合わせだけでなく、同じ効果のある薬を飲んでも起こりうる。

多剤になりがちなのが、前出の牛尾さんも複数飲んでいた胃薬である。胃薬は作用の強い薬とともに、なにかと処方されることが多い。

処方される胃薬で代表的なのは、H2ブロッカープロトンポンプ阻害薬(PPI)だ。H2ブロッカーはシメチジン(商品名タガメット、以下同)に代表される薬で、PPIはエソメプラゾール(ネキシウム)といった種類の薬が、よく病院で出される。

問題は、この2種類を飲み合わせている場合だ。単独でも十分効果があるので、併用すると胃酸が少なくなりすぎるおそれがある。これが続くと、異物の腸内混入が起こったり、長期的には栄養障害につながる。

H2ブロッカーとPPIは原則同時に処方されないが、複数の病院で薬をもらっている人は、気づかずに併用しているかもしれない。

ちなみにH2ブロッカーは、血圧を下げる降圧剤のCa拮抗薬(ニフェジピン〈アダラート〉など)との併用も体の異変の原因となる。

胃内の酸度が低下し、降圧剤の成分を吸収しすぎて、必要以上に血圧が下がってしまうのだ。その結果、浮腫やふらつきといった症状が出るケースがある。

同じように、日常的に服用する薬で重篤な症状が出る組み合わせがある。

Photo by iStock

たとえば糖尿病のSU剤(グリメピリド〈アマリール〉など)と、頭痛や発熱で処方されるアスピリンを同時に飲むと、SU剤が効きすぎてしまい、必要以上に血糖値が下がることになる。夜間低血糖を起こせば、先ほどの牛尾さんのように、家でも転倒して骨折しかねない。

ちょっと風邪ぎみだからと、すぐにPL配合顆粒のような総合感冒薬を飲むのも要注意だ。

アレルギーや花粉症で抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジン〈アレグラ〉)を常用している人は、飲み合わせによって眠くなる成分が強くなり、めまいやふらつき、強烈な倦怠感に襲われてしまう。