photo by gettyimages

なぜ「縄文」は、世界史上でも「ユニーク」な文化と言われるのか

「縄文」をめぐる7つの疑問
いま、「縄文」がブームである。2018年には、ドキュメンタリー映画『縄文にハマる人々』が話題を呼び、東京国立博物館で開催された特別展『縄文——1万年の美の鼓動』の来場者数は35万人を超えた。1月17日刊行予定の『縄文時代の歴史』(講談社現代新書)は、縄文時代の通史の決定版だ。著者の国立歴史民俗博物館教授・山田 康弘氏に「縄文」をめぐる7つの疑問にお答えいただいた。

縄文土器、あの模様に込められた意味は?

Q1:本の中に、「縄文時代に恋愛結婚はなかった」とありましたが、どういうことでしょう? なぜ、そのようなことがわかるのですか?

A1:人口数の少なかった縄文時代には,1つの集落(ムラ)ですべての食料や物資、人的資源が調達できるような、完結した集落はなかったと考えられます。集落を維持するには、近隣の集落などと物資や情報の交換をしていくことがぜったいに必要でした。

そして、そのような交換を行うには、遠近さまざまな集落と、血縁関係者がいる、あるいは出身集団が同じであるなど、さまざまな絆で結びついている必要がありました。

婚姻は、そのような結びつきを新しくつくる、あるいは継続・強化するための重要な手段でした。したがって、本人の意思とは関係なく、集落と集落のつながりの中で誰と誰が結婚するのか、あらかじめ決められていた可能性が高いと思われます。

このような、恋愛感情抜きの結婚のあり方は、伝統的な社会や、現代の狩猟採集民の間でもしばしば見られるものなので、縄文時代にもそのような婚姻形態がとられていたと考えられています。

 

Q2:見る者に強烈な印象を与える縄文土器。じつは「鍋」だとうかがってびっくりしたのですが・・・。あの形で実用品というのが、ちょっと信じられないのですが・・・

A2:すべての土器が「鍋」でだったわけではありません。基本的には深鉢と呼ばれる、胴部が植木鉢やバケツのような形をした土器が「鍋」として使用されたようです。

出土した深鉢形の土器を観察すると、内部に「おこげ」が残っていたり、土器の口の周りに吹きこぼれのあとが見られたりするものが多いことがわかります。

また、土器の外側に火が強くあてられてススがついたものや、熱によって色が赤くなったものもあります。これらの使用痕跡は、土器を「鍋」として使っていた証拠です。

土器とは、粘土で作った器の総称です。

縄文土器には用途によって、皿、浅鉢(深鉢の浅いもの)、深鉢、注口(液体を注ぐ)、壷(貯蔵用)、器台(主に深鉢を置く台)、高坏(盛り付け用)などさまざまな種類があります。「鍋」すなわち長時間の煮沸用である深鉢も、その一部をなしています。

Q2-2:ただ、「火炎土器」の強烈な(現代人の印象からはそう見えますが)「びらびら」といいますか、ああいったものは、単なる「道具」だとすると、なぜ、ついているのでしょうか? 素人には、そこが一番の疑問だと思いました。

A2-2それは考古学者にもわからないのですよ。
ただ、縄文時代の人々の土器への想いには、その呪術的な使われ方からみても、たしかに単なる道具以上のものがあります。今回の『縄文時代の歴史』にも書きましたが、おそらく土器の文様には、当時の神話や物語が込められていたと思われます。

その物語の一部が、あのような文様になったのではないでしょうか。

でもそれは、私たちだって同じではないでしょうか。

自分たちの使う道具を飾り立て、そこにさまざまな意味を込めて使用することは、今でもよく見られることではないかと思うのですが、いかがでしょう。
縄文人といっても、私たちと同じホモサピエンスなので、根本的な発想は同じです。