役員の数が半分以下に…トヨタ自動車「2019年人事」を読む

「驚きの改革」の核心
井上 久男 プロフィール

豊田社長の怒り

新しい人事制度において賃金制度がどう変わるのかについては社内ではまだ詳細に説明されていない模様だが、トヨタ関係者はこう見る。

「トヨタの常務役員ともなると、部長から一気に倍増近い年収4000万円近くなる。

当然ながら個室、秘書、車付きで、役員以上が迎賓館として使う『紀尾井倶楽部』で一本数万円のワインも開け放題。こうして贅沢をしていると、勘違いする人材も出てきて、机にふんぞり返って威張り、ろくに現場にも出向かない役員がいる。

新制度では、事実上のホワイトカラーの賃下げを狙っているのではないか。高給に安住している今のトヨタのホワイトカラーには刺激になる。

これまでのトヨタでは役職の降格もなく、いったん上がった賃金を下げることもできなかった。2級以上を一括りにすることで賃金の総原資を下げていく可能性が高い」

特にトヨタでは工場の効率は高いのに、大卒エリートホワイトカラーの生産性が低いことが問題視されている。

たとえば、株式を持ち合って資本提携したマツダとの比較では「同じような車種なのに開発期間はトヨタのほうが2倍近くかかっている。開発期間が長ければそれだけコストも増える。これは、技術部門の仕事の効率が悪く、重複した無駄な仕事が多いからだ」(トヨタ幹部)。

自分の頭で戦略を考えられない役員が、内部のリソースを活用すれば十分に「内製」で対応できるイベントまで、安易に外注してしまうような現状も見受けられる。

 

外注だけならまだしも、必要以上のコストをかけて贅沢なイベントをしているのだという。

「豊田社長が出席する新車関連のイベントが中国であった際に、社長の休憩室として、車で移動させることができるシャワーやエアコン付きの豪勢な部屋を用意していた。

しかし、それを見た豊田社長は、『製造現場は原価低減で汗を流しているのに、私にはこんな贅沢はできない』と言ったそうです。以来、その部屋を用意した広告代理店は出入り禁止になってしまった」(関連企業役員)

豊田社長の怒りは当然だろう。こんな社内の緩みがコスト高を誘発するとして、危機感を感じた最高財務責任者(CFO)の小林副社長が、「アウトソーシング禁止令」や「コンサルティング会社利用禁止令」を出したという。

トヨタ自動車は、2兆円を超える利益を常に出し続け、純利益額は日本企業では1位だ。

それでもさらに絞るのかと思う人もいるだろう。だが、ここは自動車産業が変革期に入っていることと大きく関係する。

今や競争相手は独フォルクスワーゲンや米GMといった同業他社ではなく、米グーグルや米ウーバーなど巨大プラットフォーム企業に変化している。

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トヨタの'17年の研究開発投資は1兆642億円を使って日本企業では断トツだが、他方、世界1位のアマゾンはトヨタの約2.3倍、同2位のグーグルの親会社アルファベットは約1.6倍を投じている。

こうした企業と対抗して研究開発費を絞り出すためには、無駄なコストは出せないのだ。