元東京地検特捜部エースが語る「日産VS.検察」の行方

「私がもし弁護するならば」
週刊現代 プロフィール

「俺だったら徹底抗戦だ」

ゴーン氏の特別背任を証明するいちばんの「近道」だったのが、②デリバティブ取引の損失を、ゴーン氏が日産に付け替えたとされる事案だ。自分の資産運用の失敗を、会社のカネで補填したとすれば、「私物化」にほかならない。

――ただし、損失の付け替えは公訴時効を過ぎていますね?

「たしかにこの件は時効だ。しかし過去に会社の資産を個人的に動かしたという背景があることは、特別背任を立証していく上で、貴重な情報になっていく。状況証拠をつかんでいくということかな。

海外のペーパーカンパニーを使って、会社の資産を自宅に換えていたという話もあるけれど、海外の案件で落としきるのは無理だろう。

大事なのは、国内でそうしたカネの動きがあったかどうかをなんとか押さえていくことだ。たとえ帳簿的には問題がなかったとしても、実質的に会社の資産がゴーンの所得となっていることを示していく」

Photo by GettyImages

石川氏の見立てによると、当初の金融商品取引法違反では、故意か過失かに関係なく、記載すべき事項を怠った場合に処せられる「形式犯」にとどまる可能性が高いという。

今後、東京地検特捜部が狙っていくのは、不動産や金融資産を含め、書類上は日産や孫会社以下のペーパーカンパニーが所有していたとしても、実質的にはゴーン氏のものだったことを立証していくことになる。

こうした検察側の捜査に真っ向から対抗するのが、ゴーン氏の弁護を務める大鶴基成氏だ。

大鶴氏は元東京地検特捜部長としてライブドア事件などを指揮。現場派の検事として手腕を振るったが、'10年の陸山会事件においては虚偽の調査報告書問題で告発を受ける。

弁護士に転身したのちは、読売巨人軍の違法賭博問題の調査委員長などを務める。ちなみに石川氏が特捜部長だったころ、大鶴氏は地元・大分の地方検察官の三席だった。石川氏とは司法修習期で15期後輩だ。

 

――大鶴さんはどのような方針で弁護すると考えられるか。

「大鶴氏は頼まれた以上、無罪を主張しにいくだろう、情状酌量は狙わないんじゃないかな。

俺だったら徹底抗戦だ。具体的事実は知らない、故意はないということに結び付けようとするだろう。有価証券報告書についても、きちんと取締役会の承認を得ていて、記載漏れに関してはその必要があることを知らなかった、と。

裁判になったら、相手がヤメ検とかそういうのは関係ないからね。大鶴氏の辞め方は気の毒だったけど、彼も検察にいい感情を持っていない。普通の人は受けないような事件だが、彼が引き受けたのはそういったところもあったのかもしれない」

石川氏も指摘するとおり、検察がゴーン氏を特別背任で立件するまでの道のりは、非常に長いものになるとみられる。実際のところ、内部からも「逮捕は勇み足だったのではないか」と弱音が漏れはじめている。

「クーデターを企てた日産幹部の相談に乗ったのは、ヤメ検弁護士の熊田彰英氏。マジメで口が堅く、佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問の補佐人を務めるなど、大物に引っ張りだこの人物です。

ところが、彼が所属するのぞみ総合法律事務所の上層部は肝を冷やしている。ゴーン氏が逮捕され、色々な事実が明らかになっても『これほどまで検察が決定的な証拠を押さえていないなんて、びっくりだ』と嘆息している」(日産関係者)