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メイウェザーvs天心を私たちはどう見たらいいのか

一方的か、塩試合か、熱戦か

フロイド・メイウェザー・ジュニア(41歳)が、大晦日に『RIZIN.14』で那須川天心(20歳)と戦う――。11月5日の記者会見でそのカードが発表されると、格闘技界隈は仰天した。

ボクシング界、キック界、格闘技界、マスコミ、ファン、ありとあらゆる人がおそらく誰一人としてこのカードを、想像したことも、望んだことすらもなかったからだ。関係者は口々に言った。「“まさか”こんなカードが実現するのか」「こんなカードが用意されるとは思ってもいなかった……。」と。

日本の格闘技ファンにとっては国民的ヒーローになりつつある神童・那須川天心だが、海外ではほぼ無名。もちろん、メイウェザーの知名度とは比較にならない。

世界最大のMMA(総合格闘技)イベントUFCの元チャンピオンで、2017年にメイウェザーと戦って敗れたコナー・マクレガーは、メイウェザーと那須川が並んでいる写真をSNSにアップし、「一体何が起こってるんだ? 隣の小さな奴(那須川)は誰だ?狂っている」とつぶやいた。

取材を兼ねて那須川天心と毎年富士登山をしている格闘技ライターの私自身も、ただの一度も、考えもしなかったカードだ。

 

全階級最強と言われた50戦無敗のボクサー

フロイド・メイウェザー・ジュニアはプロ50勝無敗、WBC、WBO、WBA、IBFといった世界タイトルを総なめにし、史上初めて無敗のまま5階級制覇を達成。パウンド・フォー・パウンド(体重差がないと仮定して全階級を通して誰が最強かを考える思考法のこと)と言われている。

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5階級制覇王者のオスカー・デ・ラ・ホーヤ、6階級制覇王者のマニー・パッキャオなど数々の王者を撃破し、2015年にロッキー・マルシアノに並ぶ49勝無敗で引退したが、17年にコナー・マクレガーと戦うためにワンマッチで復帰。無敗記録を50勝無敗に伸ばした。

もはやボクシング界では神の域の人とも言われるだけでなく、1試合で稼ぐ金額も神の領域だ。

Money(金の亡者)というニックネームを持つメイウェザーのファイトマネーは破格で、15年のマニー・パッキャオ戦でのファイトマネーは2億2000万ドル超、日本円で何と270億円!直近のコナー・マクレガーとの1戦でも110億円のファイトマネーを手にしている。

長者番付の常連

アメリカの経済誌『Forbes』の世界スポーツ選手長者番付では2012年、14年、15年、18年の4回も1位を記録。18年は2位のリオネル・メッシ、3位のクリスティアーノ・ロナウドの2倍を大きく上回る2億8500万ドルを稼ぎ出している。

そんな世界のスーパースターも41歳となり、去就が注目されていたわけではあるが、日本で試合した事も、日本人と戦った事もないメイウェザーが、まさか日本のRIZINのリングに上がり、しかもキックボクサーの那須川天心と戦うなど、誰一人想像すらしていなかったのである。

実際のところ、メイウェザーも本気で那須川天心と戦いたいと思ったわけではなかったようだ。ただ、これからはアメリカだけでなく、世界を旅しながらショーマッチをしてゆるく稼ぎたい。

そんな安易な気持ちで、日本でもやろうかと、日本No.1格闘技イベントのRIZINに声がかかり、RIZINの榊原信行実行委員長が那須川天心を推薦したところ、メイウェザー陣営からあっさりとOKが出た。メイウェザー陣営は、那須川天心の存在も知らなかったのだ。

那須川天心に夢と希望を抱く日本人はすっかりその気になり、格闘マスコミはもちろん大喜びで、「世紀の一戦!」「猪木vsアリ戦の再現?」「ルールは?」「階級は?」と書きたてた。

それを知ったメイウェザーは、「公式な試合をするとは言っていない。エキシビジョンだ」と発言。一度は流れるかと思われたが、榊原実行委員長がアメリカに飛び、再度交渉。3分3ラウンド、ボクシングルールのエキシビジョンマッチ(非公式試合)として行う事が決定した。