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# 認知症

認知症で「カネを下ろせない人」が急増! 最悪の場合、口座凍結に…

まずは受け入れることが必要だ
ATMで突然、暗証番号がわからなくなる。誰もが認知症になりうる時代、決して珍しいことではない。いざという時のための知識を持っていれば、焦りや不安を感じずに対処することができる。

どうしても思い出せない…

「いち、いち、に、よん、あれ?番号が違う?そんなはずはないんだけどなあ」

佐藤幹雄氏(80歳・仮名)は、コンビニのATMの前で焦っていた。いつものようにおカネを下ろそうと思ったのだが、どうしても暗証番号が思い出せないのだ。何年も使ってきたはずの、たった4桁の数字が出てこない。

この口座の番号は、亡くなった妻の誕生日に設定していたはずなのだけれど、ATMの機械は受け付けてくれない。

ふと後ろを振り返ると、若いサラリーマンがイライラした様子でスマートフォンをいじっていた。佐藤氏は操作を終えたふりをして、足早にコンビニを後にした。

「今日はたまたま、思い出せなかっただけ。自分も歳をとったのだから、人の名前が出てこないなんてこともよくある。また明日になれば思い出すだろう」

佐藤氏は、そう自分に言い聞かせたが、動揺せずにはいられなかった。家に帰り、離れて暮らす長男(56歳)から電話がかかってきた時も、その出来事を言いだせなかった。長男が語る。

「父は、自分が認知症になったことを、受け入れられないようでした。父は、栃木県で一番の高校を出て東京の大学に通い、大手企業に勤めて一家を支えてきました。性格も温厚で、ずっと頼れる大黒柱だった。そんな父が、まさかこんなに忘れっぽくなるなんて、息子の私も想像すらしていませんでした」

 

佐藤氏の妻が亡くなったのは、1年前のことだった。長男、次男は独立しているため、父は五十数年ぶりの一人暮らしをしている。会社員時代からの趣味だったゴルフもやめ、朝起きるとテレビをつけて、一日中、ワイドショーとドラマの再放送ばかり見ている日が多くなった。

「父の認知症は思ったよりも早く進行しました。そして、私の家での同居を検討し始めた頃に、実は暗証番号が思い出せず、おカネを下ろせない口座があるということが明らかになったのです。『そんな大事なこと、なんでもっと早く言わなかったんだ』と、私もつい感情的になってしまいました。父もむきになって、『わからないんだからしょうがないだろう!』と言い返します。親子で、言い合っても仕方ないのに……」(長男)

親が認知症になった時、もっとも多いトラブルは、おカネに関する問題だ。暗証番号が思い出せなくなり、おカネを下ろせなくなれば、たちまち日々の生活にも困る。

各銀行は防犯上の理由から、何回番号入力を誤るとATMが使えなくなるかは明らかにしていない。しかし、焦って無闇に番号を入力し続けると、カードそのものが使えなくなってしまう。心配した家族もつい厳しい態度をとりがちで、いさかいになることは多い。

最悪の場合、親の認知症が進めば、口座が凍結されることさえある。