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「トランプ政権の良心」マティス辞任で、アメリカは右派の天下になる

大統領が「保守論客の言いなり」に

どっちが「狂犬」だったのか…

トランプ大統領は支持者を集めた集会で、ジェームズ・マティス前国防長官をしばしば「狂犬(mad dog)」と呼んできました。米メディアによれば、マティス前長官はトランプ大統領から「狂犬」と呼ばれることを、必ずしも快く思っていなかったといわれています。トランプ大統領には、退役海兵隊大将の「獰猛な男」を部下として従えているという印象を周囲に与え、自分を強いリーダーにみせる意図があったのでしょう。

そのマティス前長官が2018年いっぱいで辞任しました。シリアからの米軍全面撤退に関して、トランプ大統領と意見が衝突したというのが大方の見方です。

マティス前長官は、トランプ政権における「ブレーキ役」を果たしてきました。

例えば、シリアのバッシャール・アサド大統領が、女性や子供を含む自国民にサリンガスを使用したときです。調査報道の名手として知られる米ワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワード記者は、著書『恐怖の男 トランプ政権の真実』の中で、トランプ大統領がシリアの悲惨な様子を映した画像や動画を観て、感情を昂ぶらせ、アサド暗殺の指示を出したと述べています。

ところが、マティス前長官はトランプ大統領の指示に対して一旦「イエス」と回答したものの、軍の上級補佐官には「アサド暗殺は実施しない」と伝え、慎重に対応を進めました。ウッドワード氏の報道が事実であれば、マティス前長官とトランプ大統領のどちらが「狂犬」なのか、という気がしてきます。

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マティス前長官の辞任を巡って、与野党の議員や米メディアから非難を浴びたトランプ大統領は、さらに衝動的な対応をとりました。同長官の辞任予定を2019年2月から前倒しし、年明けすぐに変更したのです。このとき同時に、パトリック・シャナハン国防副長官を1月1日付で国防長官代行に任命する旨を、自身のツイッターで発表しています。

 

正論を突きつけられて

マティス長官は、共和・民主両党の議員から、党派を問わず高い評価を得ていました。しかしトランプ大統領は、思い通りにならないマティス前長官を疎ましく思っていたようです。

マティス前長官が辞任表明の書簡を提出した後、トランプ大統領は自身のツイッターに投稿しました。そこに記されていた「マティス長官の貢献」は、「他国にさらなる装備品を購入させたこと」、「同盟国に対して軍事費分担の共有をさせたこと」のわずか2点のみでした。

加えて、トランプ大統領はクリスマスイブに、次のようにつぶやきました。

「(米国は)世界中の多くの非常に裕福な国の軍隊に対して、相当な財政支援を行っている。一方で同時に、同盟諸国は安全保障や貿易などの面で、米国と米国の納税者に付け込んでいる。マティス将軍はこのことを問題だとみなさなかった。私は違う。問題を解決しつつあるのだ!」

マティス前長官は辞任表明の書簡で、トランプ大統領に「同盟国に敬意を払うことによって米国は国益を守り、自由世界における自分たちの役割を果たせるのです」と直言しましたが、大統領はこの前長官の正論に、どうしても反論したかったのでしょう。