脱税30億円を摘発!国税は芦屋の超富裕層たちの何に目をつけたのか

内幕ドキュメント
週刊現代 プロフィール

25人の精鋭調査官

そもそも、芦屋税務署の陣容は全部で100人ちょっと。管内に83の税務署と9000人の職員を抱える大阪国税局の規模からすれば、極めて平均的な人数配置であり、特に重点的にチェックされている地域ではなかった。

住民の税に対する意識も、どこかおっとりとしたものだったに違いない。

だが、時代は変わった。

元東京国税局職員で、税理士の高木重利氏が言う。

「7~8年前からでしょうか。国税庁は富裕層への課税強化のための調査研究を一気に進めています。

たとえば、名古屋国税局管内の昭和税務署では、対富裕層のスペシャリストである『国際担当統括国税調査官』を配置し、富裕層の資産運用の実態を調査する手法を蓄積してきました。

そのノウハウをどんどん広げるかたちで、東京や大阪にも、次々と『調査チーム』ができています。

また、総資産3億円以上等の条件にあてはまる人に提出が義務付けられる『財産債務調書制度』や、やはり5000万円超の国外資産の保有で義務付けられる『国外財産調書制度』など、富裕層の課税逃れに目を光らせるためのシステムが次々と整備されてきています。

今までよりも、かなり緻密に資産状況を把握できる土壌が生まれているのです」

 

六麓荘町で行われた調査も、まさに高木氏の言う「調査チーム」によるものだった。
このチーム、正式名称を「重点管理富裕層プロジェクトチーム」という。

「基準は一切公開されていませんが、ある一定以上の資産を持つ富裕層を網羅的にピックアップし、国際課税に精通する実査官を中心に、複数の部署の担当者らが協力して『逃税』行為に眼を光らせています」(前出・全国紙経済部記者)

国税局に設置されたチームの成績が相当良かったのだろう。'17年には全国の国税局・国税事務所すべてにプロジェクトチームが拡大され、さらには、関東、近畿の富裕層が住む地域の税務署にも置かれることになった。その中に、芦屋税務署が含まれていたのだ。

芦屋税務署は、阪神芦屋駅から歩いて3分ほどの場所にある。駅周辺には、スーパーやマンションが並び、自転車やミニバンがひっきりなしに行き交う。同じ芦屋市内といっても、六麓荘町とはだいぶ趣が異なる。

税務署の建物は3階建てで、オフホワイトの外壁はところどころひび割れていた。1階に総合案内があり、時節柄、年末調整を控えた市民の姿がちらほらと見える。

2階には主に法人課税、3階に個人課税を担当する部署が置かれている。そして、この3階の一番奥に、「特別国税調査官」たちが陣取る。

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大型の案件や複雑な事案に取り組むことが役割の彼らは、百戦錬磨のベテランが多い。40~50代のワイシャツ姿の男性職員たちが黙々とデスクワークに勤しんでいる。

今回は、彼ら特別国税調査官を中心に、芦屋税務署をあげて総勢約25人が動員された。

具体的にどのような手順で調査が行われたのか。芦屋税務署の広報担当者に取材を申し込んだが、その口は堅かった。

「プロジェクトチームの有無や、具体的な調査が行われた時期、まだ続いているかについては一切公表しておりません。大変申し訳ないのですが、取材にはお答えできないというのが、国税庁の方針なんです」(芦屋税務署・信永弘総務課長)