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脱税30億円を摘発!国税は芦屋の超富裕層たちの何に目をつけたのか

内幕ドキュメント

ほんの一握りの「真の富豪」しか住めない高級住宅地に、国税が目をつけた。一度に多くの住人が脱税を指摘される「異常事態」は、いったいなぜ起きたのか。住民たちの動揺と国税の思惑をレポートする。

異例の大規模調査

兵庫県芦屋市の六麓荘町は、日本屈指の高級住宅地として知られる街だ。

かつては、光世証券創業者で「北浜の風雲児」と呼ばれた巽悟朗や、ダイエー創業者の中内功などが住んだことで知られ、現在も小林製薬の小林一雅会長や日本管財の福田武会長、UCCの上島一族など、日本の財界のトップたちが居を構えている。

まさに桁違いの「超富裕層」ばかりが静かに暮らすこの街に、世間の注目がにわかに集まったのは、昨年11月22日のこと。

朝日新聞朝刊に掲載されたある記事がきっかけだった。

〈「芦屋の資産家ら 申告漏れ30億円 大阪国税局指摘 富裕層への監視強化」

全国有数の高級住宅街があることで知られる兵庫県芦屋市の資産家らに対して大阪国税局が税務調査に乗り出し、昨年7月からの約1年間で、そのうち少なくとも50人以上が総額30億円超の申告漏れを指摘されたことがわかった〉

「総額30億円」という金額の大きさもさることながら、それ以上に驚きをもって受け止められたのが、申告漏れを指摘された人数の多さだ。

「『少なくとも50人以上』ということは、問題にならなかった世帯を含めれば、数百人をしらみ潰しに調べたということでしょう。ものすごい手間と時間がかかっている。

ひとつの地域を対象に、これだけの規模の調査を行うのは極めて異例のことです」(全国紙経済部記者)

 

最新の2015年の国勢調査によれば、六麓荘町の人口は650人。単純に計算すれば人口の10%近くが申告漏れを指摘されたというのだから、住人たちの心中は穏やかではないだろう。

六麓荘町は六甲山のふもとに位置し、大阪湾と阪神間の都市を一望できる抜群のロケーションだ。

街中には電柱や信号、マンションやコンビニなど、普通の街なら当たり前に目にするものが一切存在しない。

これは、かつて「東洋一の住宅地」とも称された景観を守るため、町内会に厳しい建築ルールが存在しているためだ。

一例をあげれば、建物の敷地面積は400平方メートル以上に制限され、それ以下の面積へ分筆することは固く禁じられている。

したがって、六麓荘町のメインストリート沿いには、いかにも歴史的価値の高そうな日本家屋に、中世ヨーロッパの古城を思わせる洋館など、豪邸ばかりが立ち並んでいる。

道を行き交う車は、最高クラスのベンツやBMW、アウディなど高級車ばかりだ。
これだけでも、六麓荘町が独特な空気に包まれたところであることがわかるだろう。