日本にとって米国の景気後退が一番の懸念だと指摘するのは、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏だ。
「米国は19年7月で過去最長の景気回復期間となります。すでに足元で経済が過熱気味で、年後半には景気減速、場合によっては景気後退の可能性が高い。そうなると米国は利下げに転じるため、円高が進み、日本の株価は下落していく。
消費増税の対策で消費者の負担を軽減しようとしても、米国経済が景気後退に突入したら何をやろうが駄目なんです。
さらにポイント還元が終われば、反動が中小小売店に訪れます。一時的に救われるにせよ、その後の売り上げの激減に耐えられず、廃業する店舗が増えていくでしょう」
懸念材料はまだまだある。2019年4月には「働き方改革関連法」の施行が控えている。罰則規定がある労働時間の上限規制が導入されるのだ。
経営コンサルタントの加谷珪一氏が話す。
「違法な長時間労働をさせられなくなるので、過労死などが減るのはいいことですが、従業員が受け取る賃金の面ではマイナスです。
生産性が向上して労働時間が減るのが本来の働き方改革だったはずですが、現状では今までどおりの仕事量で労働時間だけが短くなる。それでは単純に生産量が減り、企業収益は減少するうえ、労働者の賃金も伸びません。
さらに東京五輪のある'20年には、年収850万円超のサラリーマンに対する増税も決まっています。これまで比較的消費に貢献してきた層まで、おカネが使えなくなる可能性が高いのです。
日本経済は働き方改革関連法、消費増税、高所得者への増税というトリプルパンチでノックアウトされるでしょう」
そんななか、政府は「人手不足」を理由に、外国人労働者の受け入れを拡大させる入国管理法改正案を強行採決した。この結果、日本人の賃金はさらに低下していく。
「人手不足なら、本来はまず日本人の給料を上げて日本人を雇用するべきところを、外国人労働者で埋め合わせようとしています。
そうすると、賃金はそのままか、むしろそれ以下で外国人を雇用することになる。経済合理性で言うと、景気が悪化した場合には人件費の高い日本人を先に解雇するおそれも出てきます。
株高になっても『実感なき景気回復』と指摘されてきましたが、東京五輪の後に景気が後退すれば、一転して『実感のある不景気』になるおそれも考えられるのです」(ニッセイ基礎研究所経済調査室長・斎藤太郎氏)
東京五輪後の景気後退は、多くの識者が指摘することだ。安倍政権だって、それは百も承知。だからこそ、自分の在任中だけは不景気にならないよう空前の「バラマキ」を行っている。今から準備するのが得策だ。
「週刊現代」2018年12月15日号より