乳がんガイドライン改訂! 「患者9万6000人」時代の治療とは?

医師と協働してカスタマイズ治療を
からだとこころ編集部 プロフィール

治療は千差万別だから、自分にあった治療方法を

同等の治療効果を期待できるのであれば、その中からどれかを選ぶことになります。たとえば手術には、乳房を残す方法もあれば、すべて切除したうえで再建する方法もあります。

また、近親者に乳がんの患者さんが多いという場合には、遺伝性の乳がんの可能性があります。それを明らかにする検査をうけるかどうかも、選ぶべきことのひとつです。

再発のリスクを減らすことは重要ですが、必要以上の治療を受けることで、不利益を被ることもあります。患者さんが大切にしたい「自分らしさ」を大きく損なうことなく、十分な治療効果を得られる方法はなにか、医師と相談しながら決めていくことが大切です。

●治療方針を決めるポイント

〈がんの進行度〉
がんの進行度を示すステージは、治療方針を決める基本的な指針となる
〈全身状態〉
閉経前か後か、持病の有無、遺伝性がんの可能性など。薬物療法をおこなう場合の薬の選択に必要な情報
〈希望〉
乳房を残したいか、出産の希望、再発防止の優先度、頻回の通院が可能かどうかなど
〈がんの性質〉
がんのサブタイプ(乳がんの細かい分類)、悪性度など。薬物療法をおこなう場合の薬の選択に必要な情報

シェアード・ディシジョン・メイキングってなに?

患者さん自身が「自分らしく過ごせる方法はなにか」をじっくり検討し、「選ぶ」ことができるかどうかは、医師との関係性にかかっています。

まず、パターナリズム(父権主義)という関係性は、医師が示す方法に、患者は黙って従うという関係です。患者さんに治療に対する選択の余地はありません。

それに対して、コンシューマリズム(消費者主義)とよばれる関係性があります。消費者である患者さんは、自分の思う通りの治療方法を主張できますが、医師のアドバイスが反映されにくい側面があります。「手術はいや」「抗がん剤などは使いたくない」などという患者さんの希望が、かえって自らの選択肢を狭め、効果的な治療から遠ざけてしまうおそれがあります。

そして、昨今の乳がん治療で注目されるのが、シェアード・ディシジョン・メイキング(協働意志決定)とよばれるものです。医師と患者さんが対話を重ね、治療効果と患者さんが大切にしている「自分らしさ」、それぞれを最大限にいかす方法を考えていける関係をいいます。

行き過ぎたパターナリズムコンシューマリズムは、それぞれに問題が多いものです。将来のあなたやあなたの大切な人のために、今、しっかりと乳がんについて学び、納得のうえで治療にのぞんでいくことが大切です。

家族やパートナーの方もいっしょに医師との相談にのぞみ、がんに向き合おうとしている患者さんを理解し、支えるようにしましょう。

パターナリズム(父権主義)
医師が示す方法に、患者は黙って従うという関係。患者さんに選択の余地はありません

コンシューマリズム(消費者主義)
「手術はいや」「抗がん剤などは使いたくない」などと、患者さん自ら選択肢を狭め、効果的な治療を受けられなくなってしまうおそれがあります

シェアード・ディシジョン・メイキング(協働意志決定)
医師と患者さんが対話を重ね、治療効果と患者さんが大切にしている「自分らしさ」、それぞれを最大限にいかす方法を考えていける関係

医師のオススメと自分の考えが一致しないときこそ、十分な話し合いをするようにしましょう

【写真】シェアード・デシジョン・メイキング
  医師と患者さんが対話を重ねて治療方針を決定する。家族やパートナーもいっしょに相談を photo by gettyimages

乳がんのことがよくわかる本』は、乳がんの検査・治療・治療後の生活など、これからの乳がんとの"つきあい方"についてまとめてあります。いわゆる「乳がん家系」についても、最新の知見を踏まえて解説しています。

とくに本書では、手術(乳房を残すか、再建するか)や薬・放射線治療について、妊娠の希望など、治療後の人生を自分らしく生きるための選択肢についてやさしく解説しました。

ご自身や、ご自身の大切な人が乳がんの心配を抱えているようであれば、本書のさまざまなヒントがおおいに参考になることでしょう。

 本記事で紹介した本はこちら 

乳がんのことがよくわかる本

【書影】乳がんのことがよくわかる本

山内 英子 監修

100ページ/2018年11月15日発売
本体1,300円(税別)

 書籍詳細はこちら    Amazonはこちら 

2018 年に出された新しい乳がんの診療ガイドラインを踏まえながら、基礎知識から最新治療までをくわしく解説していきます。乳がんの疑いが濃厚なとき、あるいは診断直後になにを検討すればよいか、乳房を残すか、再建するかなど迷ったときに役立つ1冊です。