あの大谷翔平も心酔する、中村天風とは何者か

『運命を拓く』を読んでいた
週刊現代 プロフィール

「異様なオーラがあった」

この間、海軍大将・東郷平八郎や平民宰相・原敬、経営の神様・松下幸之助など、多くの偉人たちが天風に学んでいる。

プロ野球の西武などで監督を務めた広岡達朗氏も、晩年の天風から直接教えを受けた一人だ。

「現役時代、スランプに陥ったときに紹介されて天風先生の講演会に行きました。羽織・袴で立つ姿は威厳に満ちていて、異様なオーラがあった。

天風先生の教えには、難しい部分もあるけれど、その肝は簡単に言えば『考え方ひとつで、人間はどうにでも変わる』ということに尽きます。

逆境にも悲観せず、むしろ自分を成長させる試練として捉える。この大切な心構えは、天風先生に教わったものです」

広岡氏が言う通り、天風の教えの核にあるのは極めてシンプルな「ポジティブ・シンキング」だ。

〈運命というものには二種類ある。どうにも仕様のない運命を天命といい、人間の力で打ち開くことの出来るものを宿命というのである〉(以下〈 〉内は天風の著書より抜粋)

生まれる時代や場所、親は自分では選ぶことはできない。しかし、それ以外の人生の要素の多くは、自分自身の心がけ次第でいくらでも変えることができる。

それを天風はいみじくも一言で表現している。

〈人生は心一つの置どころ〉

物事を悲観的に捉え、取り越し苦労をするのではなく、気持ちを常にはつらつと保つことが良い人生を送る秘訣だ、と説いているのだ。

 

こうした「ポジティブな心の状態」を保つため、天風が重要視したのが「欲」を持つことだ。

〈欲を捨てろなんて、そんな消極的な、できないことは大嫌いだ。もっと人生は積極性を発揮して、大いに欲望の火を燃やせ〉

「一般に、宗教や自己啓発の世界では禁欲し、我慢することこそが成長につながると語られがちですが、天風さんは『欲を捨てたいというのが欲じゃないか』と断言しています。

人間としての進化や向上につながる楽しい欲を燃やして前向きに生きろ、と説いているのです」(前出・平野氏)

ただし、自分の欲に従って打ち立てた目標は、何が何でも達成しなければならない。

〈自分の理想は常に、現実のものと同じように、自分の心にはっきりと明瞭に描きなさい。そして、その描いた絵は、決して取り替えないようにしなければならない〉

大谷はメジャーで活躍するという目標を高校時代から掲げ、それに向けて脇目もふらずに邁進を続け、ついには達成した。まさに、時を超えて天風の教えを体現した存在と言っていいだろう。