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「特捜vs.ゴーン」検察史上に残る闘いの行方を読み解く

日産はこれからどうなるのか

国際問題になりかねない

ゴーン氏の逮捕は、西川社長をはじめ幹部が結成した「極秘告発部隊」と、東京地検特捜部が上げた一定の成果である。

だが、日産が抱える問題はここからが正念場だ。ゴーン氏が去った日産は、ルノー・日産・三菱3社連合を維持するのか否か、そして検察はどこまでゴーン氏を絞れるのか。

元GM副会長で米国自動車界の「ドン」であるボブ・ラッツ氏は、ゴーン氏と3社連合について、本誌にこう語った。

「ゴーン氏と会うたびに、私は彼が『CEO病』に罹っていると思っていました。倒産寸前の会社を復活させたCEOにありがちなことで、みんなに崇められ、自分を規律や法を超えた存在と思い込んでしまうことです。

3社連合について、もともと私はうまくいくと思っていませんでした。表面上はうまくやっていたかもしれませんが、日産からすれば経営不振のルノーと組む意味がまったく見いだせないのが正直なところです。

ゴーン氏の逮捕は、この関係を振り出しに戻すいい機会ではないでしょうか」

改めて、ルノー・日産・三菱の間で締結されているアライアンス(連合)について整理しよう。'99年、倒産寸前だった日産はルノーと資本提携を結び、'03年には2兆円超の有利子負債を完済する。

'06年からルノーは日産の株式43%を取得し、連結子会社している。そして'16年、燃費偽装問題が発覚した三菱自動車の株式34%を日産が取得し、3社連合を形成するに至った。

ゴーン氏は各社の会長を務め、実質的にこのアライアンスのリーダーである。

ただし、日産もルノーの株式15%を持ち、形式上は持合会社になっている。アライアンス内でのアンバランスな株式配分で、現在ルノーは日産に対して不可逆的な議決権を持っている。

だが、従業員一人当たりの売上高は親会社のルノーよりも日産のほうが高い「逆転現象」が'09年より続いていた。

 

ルノーの大株主はフランス政府であり、経済・産業・デジタル大臣を務めてきたマクロン大統領がルノーと日産の統合を計画していたのは厳然たる事実だ。

「ゴーン氏が去ったことで、日産はルノー株を買い増し、お互いの議決権を相殺することもできるようになりました。完全子会社化を避ける手立ては整いましたが、ゴーン氏に代わる日仏の調整役を担う人物がいないのも事実。

今の体制で日産がガチンコの『独立戦争』を仕掛ければ、両国間の国際問題に発展しかねないので難しいところです」(経済評論家の加谷珪一氏)

今の自動車業界は、他社と合従連衡を組んで世界戦略を描かなければ生き残れない。フォルクスワーゲングループやGMがその典型例だ。

ルノーの業績が芳しくないとはいえ、部品や製造拠点を共有すれば、コストカットにつながる。「日産を守る」という社内感情が強くあったとしても、提携を解消すれば日産自体が潰れてしまうかもしれない。

「後継者問題」も悩みのタネだ。経済ジャーナリストの磯山友幸氏はこう考える。

「ゴーン氏がいなくなり、日産の経営は一時的に悪くなる可能性があります。どの企業でも、『天皇』と呼ばれる存在が辞めれば、業績が落ち込むことのほうが多い。

日産の幹部クラスがゴーン氏のイエスマンで固められていたと考えると、その中からリーダーシップを取れる人物が出てくるかどうかは未知数です」