「日産ゴーン事件」と「外務省・鈴木宗男事件」は酷似している

佐藤優が斬る「特捜部の思惑」
佐藤 優 プロフィール

ゴーン氏と鈴木宗男氏の「立ち位置」

邦丸:日本は司法、行政、立法の三権分立の国ですが、行政側のトップが内閣総理大臣、官邸ですよね。そんなこと絶対にあり得ないと思うんだけど、官邸側から司法、裁判所のほうに「これ、ちょっとどうなの?」ということはないんですよね?

佐藤:あり得ないですね。

邦丸:それをやったら終わりですよね。

佐藤:いや、終わりというか、率直に言って検察は、総理大臣も含めて政治家なんてバカにしているから。そんなヤツらの言うことなんか聞かない、と。検察と官邸の間でメッセージのやり取りがあるかないかと言ったら、ありますよ。でも、それは直接ではない。記者を通じてなんです。

邦丸;はあ~。

 

佐藤:政治家や検察の幹部には「記者懇談」というのがあるでしょ。その懇談内容のメモが回っている。総理や官房長官が懇談をする。あるいは検事総長、東京地検特捜部長が家の前で待っている記者に対応する。記者はそのメモを上に上げる。横流しもする。それは政治家も検察官もわかって言っているわけです。そういう一種のツールとしてメディアを使っている。だから、そこのところでお互いの意向を理解するということはあります。

たとえば私の事件でいうと、あのときカギになったのは福田康夫(当時、官房長官)さんだと思うんです。「鈴木宗男を捕まえても、小泉政権には何の影響もない」──こういったことを、懇談で何回も言っていた。そのメモは私も見ました。メモは検察にも回っているから、検察はそれを見て「官房長官がそう言っている以上は大丈夫だ」と判断する。こういう間接話法はある。

邦丸 なるほど。

佐藤 それから安倍政権の性格を考えた場合、こういう余計なことはしてくれるな、という意向のほうがむしろ強いでしょう。だから日産の件も、よくこれは国策捜査じゃないかと言われるんだけれど、われわれの事件のときとは違う。あのときは北方領土交渉が絡んでいたでしょ。今回のは率直に言いますけど、日産の内紛だから。

でも、ちょっと鈴木宗男事件に似てはいますよね。どういうことかというと、外務省を「外政省」という名前に変えよう、という話が出たときに、鈴木さんが外務省の名前を守ってくれた。「大使の3分の1を外部大使にしろ」という話が出たときにも、官房副長官だった鈴木さんが守ってくれて、外部大使を入れなくて済んだ。全省庁が「局を2つずつ減らせ」と言われたときも、外務省には「前もって局を2つ増設する要求を出しておけ」と鈴木さんが知恵をつけてくれた。それで外務省において、鈴木さんの影響力が強くなった。

その後、田中真紀子さんという非常に「ユニークな人」が外務大臣になって、省内がぐちゃぐちゃになったときに、外務省は鈴木さんに力をつけさせて田中さんに出て行ってもらう流れをつくった。でも田中さんが出て行った後、今度は鈴木さんの力が強くなり過ぎた。「自分たちの思いどおりにならない。やっちまえ」ということで、結局鈴木さんは外務省を追い出された。

邦丸:ははあ。

佐藤:ここに、技術者たちが非常に強くて、戦前からの長い伝統も持っている、とある自動車会社がある。どうも調子がよくなくなった。ところが、リストラとか大胆なことは、組合の関係でできない。それで、ヨーロッパのある国の自動車会社と提携して資本注入してもらって、そこの副社長をやっている、どんなことでも非情に実行する恐ろしい男を連れてきて、見事に会社は蘇った。

いまや、そのとき資本注入してくれた会社よりも強くなった。このヨーロッパから来たおじさん、目障りだな。そろそろ消えてくれないかなあ──こういうふうに思っていると、「こういうのありまっせ」「こういうのもありまっせ」と……外務省と検察が握って、鈴木宗男に出て行ってもらった構図と似ていますよ。

邦丸:似ていますね。