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「日産ゴーン事件」と「外務省・鈴木宗男事件」は酷似している

佐藤優が斬る「特捜部の思惑」

※本記事は『佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」』に収録している文化放送「くにまるジャパン極」の放送内容(2018年12月21日)の一部抜粋です。野村邦丸氏は番組パーソナリティです。

この事件の「根本的におかしな部分」

邦丸:東京地裁が、東京地検特捜部によるゴーン氏の勾留延長申請を却下する判断を下したということです。今年(2018年)中に保釈されるだろう、と言われていましたが。

佐藤:ちょっと整理して考えましょう。実は、ゴーンさんは勾留が2つかかっている。1つ目の勾留が、最初の5年分(2011年度~2015年度の報酬)の件ですね。

邦丸:虚偽記載ですね。

佐藤:これに関しては、すでに起訴された。起訴されたということは、その時点でもう取り調べは終了している。そのうえでなぜ勾留が続くのかというと、ゴーンさんが否認しているので、罪証隠滅と逃亡のおそれがあるからです。その勾留が続いているんですね。

二番目の勾留は12月20日で切れている。これを延長しなかったのは、3年分(直近の2015年度~2017年度の報酬)について逮捕して取り調べをする必要がある、ということでの勾留です。だから、二番目の勾留が切れても一番目の勾留が生きている。その一番目の勾留については別途、裁判所が判断するわけですね。検察と裁判所は、水面下でものすごくやり合っていると思いますよ。

背任などの余罪を今、調べているわけですが、勾留を解除してしまうと任意の取り調べになりますから、「それなら私は行かない」、あるいは「弁護士同席だ」とか「音を録らせてもらう」という話になってくる。そうすると取り調べが事実上できなくなるから、捜査終結になります。だから検察は全力を挙げて、これを阻止しようとしている。組織の存亡がかかってくる問題ですから。

 

邦丸:裁判所が勾留請求を棄却するのは、異例中の異例と言われていますね。

佐藤:特捜事案については、普通はないと思います。しかも否認事案ですからね。通常は、否認せずに認めている場合でも、初公判までは保釈にならないことが多いんですよ。要するに、「認めます」と言っている人の場合は、比較的早く出ることができるんですが、それでも2ヵ月ぐらいは置いておかれる。否認している場合は、尋問が終わるまでは拘置所の中に入れられているというのが、私たちのころまでのルールだったんです。だから私の場合は512日、鈴木宗男さんの場合は437日、拘置所にいたんですね。

邦丸:検察はもう起訴している。一方、同じ司法のなかでも裁判と検察は違う。裁判を開いていろんなことを訊くにしても、最終的には検察とは別のゴールを今、裁判所は見始めているということですか。

佐藤:そういうことです。その理由が海外の報道だとすると、日本の司法の独立って何なんだろう、となります。その逆もあり得るということですから。外国から厳しいことを言われたら厳しい判断をしてしまう。すると、日本の司法権は独立していないのではないかということになるわけです。

裁判所の判断がなぜ、こういうふうに揺れているのか。それが海外メディアの影響だとすると、非常に怖いですよ。今回は「ゴーンさんを解放しろ」「長期勾留はおかしい」という方向ですが、逆に「こんな悪いヤツがいる」「日本の司法は甘いんじゃないか」という国際世論が高まったら、では今度は厳しくやるのか。そうなると、もはや人民裁判に近くなっていく。

邦丸:はい。

佐藤:だからそこのところは、本当に何が起きているのか、よく吟味したほうがいい。もし裁判所がきちんと証拠を見て「特捜は無茶をしている」と独自に判断しているのなら、これは立派なことです。ただ、その場合は逆に裁判所にも返ってきますね。そもそも、なんでそんな案件で逮捕を認めたんだ、なんで逮捕状を出したんだと、こういうことにもなってくる。だから要するに、おかしいんです。この話は全体として。