2018年、さまざまなアプリが話題になったが、そのひとつに『TikTok(ティックトック)』を入れるのは異論のないところだろう。
日本では「ショートビデオアプリ」や「ショート音楽動画共有アプリ」などという形容詞で紹介されているTikTokは、中国のメディア企業『ByteDance』が提供するもので、日本には2017年夏に上陸した。
その後、若者を中心に急速に人気が拡大したのはご存知の通り。惜しくも大賞受賞は逃したものの、2018年のユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされ、11月にはソフトバンクがByteDanceへの出資を行うなど、ビジネス面でも注目が高い。
とはいえ、自分が踊る動画を撮影・共有したり、若者のおかしな動画を閲覧したりするアプリなど、自分には無関係だと感じている方々も多いのではないだろうか。
しかしそんな方でも、そろそろTikTok、そして運営会社であるByteDanceに注目しておいた方が良さそうだ。彼らがコンテンツ配信、なかでもスポーツ配信の未来を左右する可能性が出てきているからである。
2018年11月27日、ByteDanceが1件のプレスリリースを発表した。それは米国のプロバスケットボールリーグNBAとのグローバルパートナーシップ締結を宣言する内容だった。ByteDanceはTikTok以外にも、動画アプリ『Douyin』やニュースアプリ『Toutiao』といった、メジャーなコンテンツ配信プラットフォームを所有している。
彼ら自身はコンテンツ制作を行っていないのだが、他社との提携やユーザーによる投稿などを通じて得られたコンテンツを、ユーザーごとにパーソナライズして興味のあるものを配信するという手法を通じて、いずれも大勢のユーザーを獲得することに成功している。こうしたプラットフォーム上において、今後はNBAのコンテンツも提供されるというわけだ。
特にTikTokについては、各国語によるNBAコンテンツの提供を6大陸で開始予定だそうである。プレスリリースから一部引用しておこう。
多くの若者を獲得しているプラットフォームへのコンテンツ提供。それだけであれば当たり前のビジネス戦略だが、同じプレスリリースには、もうひとつ興味深い点がある。次の一節だ。
実はByteDanceは、最近の中国系スタートアップのご多分に漏れず、高度なAI技術を駆使する企業として知られている。たとえば先ほど紹介した、ByteDanceが提供する動画アプリやニュースアプリでは、ユーザーに向けたパーソナライズが行われる際、AIが個々のユーザーの好みを分析している。
ユーザーがどのようなコンテンツをどのくらい視聴したかといった点はもとより、タップやスワイプといった画面操作に至るまでユーザー行動を把握。そこから割り出された趣味や嗜好に基づいて、コンテンツの選択や加工、配信が行われるのである。