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米国株大暴落が「リーマンショック級」どころでは済まない可能性

トランプ大統領の再選も危ぶまれる事態

パウエル議長が引いたトリガー

「ついにFRBはやっちまったな」というのが筆者の素直な感想である。

FRBは12月18、19日のFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げを決定し、政策金利であるFFレートは2.25~2.5%の水準となった。

トランプ政権の経済閣僚から再三の利上げ見送り要請があったにもかかわらず、パウエルFRB議長は利上げに踏み切ったわけだが、これをきっかけに世界の株価は軒並み暴落した。その下げ幅はリーマンショック以来の大幅なものになっている。

これまでFRBは、バーナンキ、イエレンと一流の経済学者を議長に据え、慎重に利上げを進めてきた。何度か紆余曲折があったが、利上げとFRBの資産圧縮を段階的に進め、「金融政策の正常化」が実現する直前まで、なんとかこぎつけた。

だが、今回の利上げは、これまでのバーナンキ、イエレン両体制の努力を水の泡にしてしまうリスクをはらんでいる。しかも、同時に、トランプ大統領が掲げる経済政策である「トランポノミクス」をも失敗させ、もしかすると、2020年の大統領選におけるトランプ大統領の再選をも頓挫させることに繋がりかねない。

されに下手をすれば、リーマンショック直後、各国が協調して緩和政策を採る中、何の行動も起こさず、円高と株価暴落を招いた白川日銀以来の金融政策失敗事例になるかもしれない。

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米国経済に対するトランプ大統領とFRBの見解の違いについては、先週の当コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59080)で言及したとおりだが、今回のFRBの金融政策が今後の米国経済にもたらすことになるのかもしれない「カタストロフィー」を考えるにあたり、参考になるのが、「1937年大不況」である。

「1937年大不況」とは、1929年10月の株価暴落に始まる世界大恐慌(世界的デフレ)に対する政策対応として1933年以降続いてきたリフレーション政策が、1937年に解除され、本格的に出口政策が始まった途端に、米国経済が急激に失速し、再び深刻なデフレに見舞われてしまった出来事を指す。

特に当時の「出口政策」においては、FRBによる金融政策の失敗が米国経済に再デフレをもたらした可能性が高いというのが筆者の見解である(これについては、拙著「恐慌脱出」の第7章でやや詳しく言及した)。

 

したがって、筆者はバーナンキ元FRB議長の「テーパリング宣言」以来、FRBがどのように出口政策を進めていくかに注目していた。また、「トランポノミクス」成功のためには、ある程度、FRBがトランプ政権の拡張的な財政政策に同調する必要があると考えていたので、米国の出口政策は極めて緩やかなペースで行えば成功すると考えていた(これについては、拙著『ザ・トランポノミクス』第4章で言及した)。

FRBも当然、1937年大不況の教訓を学んでいるはずなので、慎重な金融政策に終始し、トランプ政権の下、経済の正常化を実現させることを期待していた。

だが、今回の利上げによって、一転、トランポノミクスが成功する確率はかなり低下したのではないかと懸念している。つまり、パウエル議長は「1937年大不況の再来」のトリガーを引いた可能性がある。