発見! 西野ジャパンとGoogleの意外すぎる「共通点」

「期待値」を超えるチームの条件とは?
木崎伸也、仲山進也

「同調」と「調和」は似て非なるもの

仲山 結局、それは“見せかけのまとまり”だった。1つのチームになれているときは、「自分たちのサッカーって何ですか?」と訊ねたら、個別に聞いたとしても全員同じ答えが返って来る。でも2014年ワールドカップでは、みんなバラバラのことを言っていた。フォーミングのステージにすぎなかったことが、1分2敗という結果に現れてしまいました。

木崎 ザック監督は何を見誤ったのでしょうか。

仲山 「同調」と「調和」は違う、ということに気づいていなかったのではないでしょうか。フォーミング状態で一丸になるのが「同調」で、ノーミング状態で一丸になるのが「調和」です。似た響きがあるけどじつはまったく異なるこの2つの状態を見誤ったのが、ザックさんのミスだったと思います。

木崎 2018年ワールドカップロシア大会前に解任されたヴァヒド・ハリルホジッチ監督は、いかにもわかりやすい「ストーミング型」でした。後任には、対極的な西野朗監督が選ばれましたね。

【写真】ハリルホジッチphoto by gettyimages

仲山 ハリルホジッチさんは典型的なストーミング型で、とにかくずっとかき混ぜ続けて、みんな疲れてしまった。もったいないなという感じです。

ロシア大会を率いた西野さんに関してはまだ情報が少ないのですが、功績は「ハリル式からの解放」にあったと考えています。

「自分は世界を知らないから、みんなで考えよう」と呼びかけ、ハリル時代に鬱憤を抱えていたベテラン勢が言いたいことを言えるようになった。ただし、中堅以下の選手たちが本音で話せるようになったわけではないので、フォーミング状態で規律がゆるんだ感じ。

結果が出ずにオーストリア合宿でバラバラになりかけましたが、選手だけでミーティングをして、みんながワールドカップにかける思いを話したそうです。1人ずつ順番に言って、互いに何を思っているかが見えて、「本音を言っても大丈夫だ」という雰囲気が生まれた。そこで一気にストーミングが進んで、「ノーミング」に到達できた。

Googleが突き止めた「優秀なチーム」の共通点

【写真】西野photo by gettyimages

木崎 西野さんがすごいと思うのは、ふつうは監督になったらいろいろ手をつけたくなると思うんです。「何もやらない」って簡単じゃない。でも、西野さんは指示を我慢した。

オーストリア合宿では、チームミーティングで練習の映像を見ながら、みんなで意見を出し合っていたそうなんですね。本田圭佑選手は自らのサッカー観を、乾貴士選手はエイバルの、香川真司選手はドルトムントの、大迫勇也選手は当時所属していたケルンのサッカー観を主張した。西野監督はそれをただ見ていて、選手が熱くなってくると「今日はここまでにしよう」と終わらせていたそうです。

意見がまったく噛み合わなかった中、最後にどのサッカーで行くかを決めたのは西野さんだった。大会後、ほとんどメディアに出ず、ベスト16に進んだ功績をいっさい自慢していない。

【写真】仲山氏に聞く木崎氏仲山、木崎両氏のトークが熱をおびる 撮影:岡田康且

仲山 そういう指導スタイルを、僕は「何もしてない風リーダーシップ」とか「愚者風リーダーシップ」と表現しています。

答えを示してメンバーを導くのが「賢者風」で、答えはわからないからみんなに考えてもらうのが「愚者風」です。上に立つ人が鎧を脱いで弱みをさらすと、みんな鎧を脱いでいいのかな、本音を出してもいいのかな、という雰囲気になりやすい。西野さんはそれをやったのかなと。

木崎 なるほど。鎧を脱ぎやすい雰囲気をつくった、という分析はすごく腑に落ちます。

仲山 グーグルが最近、「心理的安全性」というキーワードを挙げて、話題になっています。

グーグル社内の優秀なチームの共通点を探る「アリストテレス」というプロジェクトを立ち上げていろいろ調査してみた。その結果わかったのが、「みんなが安心して意見を言い合えるという関係性」だったんです。英語で言うと、「サイコロジカル・セーフティー(psycological safety)」。

フォーミング(形成期)を進めることって、心理的安全性を確立するプロセスなんです。このメンバーなら意見を言っても非難されたり、不利な状況にならないと思うからこそ本音を言えるわけで。互いに意見を言っても、危険にさらされないという関係が大事なんです。

「他人は間違っている」と思っていませんか?

木崎 西野監督のように、自ら鎧を脱ぐというやり方のほかにも、心理的安全性を高める方法はありますか?

仲山 2016年から2017年にかけて、横浜F・マリノスのジュニアユースで、月に1回、チームビルディング講座を担当していました。

2~3時間の講座で、毎回、最後に1人ずつ感想を語ってもらうのですが、これが印象的で。中学2年生の選手たちなんですが、最初は当たりさわりのないコピペのような感想が多く、自分の言葉で感想を言えるのは2割くらいでした。

それが、お題をやってみんなで振り返りのおしゃべりをすることを繰り返したり、「しゃべるときに沈黙があってもいいよ。それは気まずい沈黙ではなく、情報処理の間(ま)だから」と伝えて、沈黙OKという共通認識をつくったりすると、3回目くらいで急に自分の言葉でしゃべる人が7割くらいに増えた。心理的安全性ができて、ストーミングが起こり始めたんです。

木崎 面白い現象ですね。

仲山 ストーミングには作法があるんですよ。自分と異なる意見を“敵”のように思い込むのが最悪で、お互いの意見を建設的にすり合わせていく。こういうことに子供のときから慣れていくと、日本のサッカーは強くなると思います。

日本人は空気を察知して、自分で良かれと思って行動することが多いですが、それが伝わらずに理解されないと、イライラして感情的になって、グループが崩壊する、ということがある。ストーミングの作法を知らないから、同じミスを繰り返してしまう。

木崎 それが歴代の日本代表チームで起こっていると痛感したから、何としてもそれを止めたくて『アイム・ブルー』という作品で訴えたんです。

仲山 「自分は正しくて、他人は間違っている」と思いがちだけど、『アイム・ブルー』みたいにVR(バーチャルリアリティ)で他人の視点になれたら、みんな正しいってことに気がつく。“正しさの間”が違うだけなので、適切な間を取ればいいんです。

間をチューニングするためには、ギアをパーキングに入れて俺は動かないぞ、という姿勢ではうまくいかない。互いにギアをニュートラルに入れて動く準備をして、間を調整する。そういうストーミングの作法を共有できると、平和的にストーミングを超えてノーミングに進むことができるんですよ。

【後編→ 本田圭佑監督も実践!「組織を強くする」たった1つの方法 に続く!】

【写真】仲山氏と木崎氏 お互いの著書を持って対談後、お互いの著書を持って 撮影:岡田康且

アイム・ブルー
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