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「乗るまでに1時間かかる」車椅子利用可能タクシーの盲点

理念のためには改善が必要では

一般の乗客だけでなく、障害者や高齢者など誰もが利用しやすい車両として国土交通省が認定しているユニバーサルデザインタクシー(以下、UDタクシー)。東京2020オリンピック・パラリンピック開催に向けて急速に普及が進んでいるが、車椅子ユーザーからは「利用しづらい」との声が上がっていることをご存じだろうか。

トヨタ自動車(以下、トヨタ)の「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」がそれなのだが、「JPN TAXI」の公式ホームページには、車椅子で乗降するには10分程度かかる、と書かれている。しかし実際に乗車しようと思っても、その何倍も時間がかかるうえに、時には乗車拒否も起きているという。

タクシー乗り場では混乱も生じて、車椅子ユーザーがつらい思いをしている現実がある。「誰もが利用しやすい車両を」という理念を掲げ、その実現を目指すことはとても重要だが、実態がその理念に追いついていないなら、改善を図る必要があるだろう。

 

「乗せ方がわからない」

2018年11月下旬の深夜。東京都内のJR駅近くにあるタクシー乗り場で、「JPN TAXI」に乗ろうとしている電動車椅子ユーザーの男性と、付き添っている女性の姿があった。

11月下旬の深夜、東京都内のJR駅そばのタクシー乗り場

運転手が一所懸命に車椅子を乗せるスペースを作ろうとしているのだが、なかなか作業は進んでいない。電話で会社に聞いているが、誰もわかる人がいないようだった。

最近、街中でJPN TAXIを見かけることも多くなった。一般のタクシーよりも車高が高い、ワゴンタイプのタクシーだ。座席が広くゆったりと座れることから、好んで利用する人も多いはずだ。

このタクシー、後部座席を畳んで広いスペースを作ることで、車椅子利用者も乗れるような設計となっているのだが、この「仕様変更」が実は大変な労力を要するのだ。

助手席を前にずらしてから、後部座席の座席部分を起こして畳み、スロープを組み立てる。スロープは2つに分かれているため、2つを接続する部分と、車両に固定する部分に細かい作業が必要になる。

安全を確認して車椅子を乗せると、今度は複数のベルトとシートベルトで、車椅子と車椅子ユーザーをそれぞれ固定する。その際、車内で車椅子の向きを変える必要があるのだが、これがなかなかうまくいかないのだという。

公式ホームページでは「10分程度で変更可能」と書かれているが、相当手際が良くなければ、短時間で終わらせることは難しいだろう。

かなり手間取っている様子

車椅子の男性に話を聞くと、あきらめたような様子で状況を話してくれた。

「すでに20分以上待っていますが、この様子だとまだまだ時間はかかるでしょう。乗るまでに1時間かかるのはザラですね。運転手さんは一所懸命やってくれているのでありがたいのですが、車椅子を乗せるようにするためにどうすればいいのか、使い方がわかっている運転手さんはほとんどいません。なんとも複雑な気持ちになりますよね……」

付き添いの女性は、怒りを込めて続けた。

「今日は最初、駅のロータリーにあるタクシー乗り場でJPN TAXIに乗ろうとしましたが、2台に乗車拒否されました。あそこでは乗れないと思ったので、こちらの乗り場に移動しましたが、この状況です」

そう話していると、同じタクシー会社の、JPN TAXIが通り過ぎていく。

「同じタクシー会社の、同じ車種に乗っている人が通りかかっても、今みたいに助けることもなく無視していきます」