2018.12.28

「おカネがなくても現代の若者は幸福だ」論は、本当に正しいのか

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橋本 健二 プロフィール

若いアンダークラス男性の不幸と絶望

「今日よりも明日がよくなる」と信じることができない状況に置かれたアンダークラス男性は、古市のいうように「今は幸せだ」と考えているのか。明らかに、違う。幸福どころか、むしろ不幸だといった方がいい。それは、図表4をみれば一目瞭然である。

 図表4 アンダークラスとその他の階級の幸福感(男性・20-59歳) 出典)2015年SSM調査データから算出。 注)幸福度が10点満点で7点以上の比率。
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アンダークラスの男性で、自分を幸福だと考えている人の比率は、二〇歳代で三五・〇%に過ぎず、三〇歳代ではさらに下がって二二・七%である。これに対して他の階級の男性では、二〇歳代が五一・三%、三〇歳代が五九・二%である。

アンダークラスとその他の差は、二〇歳代ではやや小さく、三〇歳代でぐんと拡大する。これは二〇歳代のアンダークラスには、まだ他の階級へと脱出する可能性があるのに対し、三〇歳代ではその可能性が小さくなっていることを考えれば納得がいく。ちなみにこの比率は、四〇歳代でも二五・〇%と低迷し、五〇歳代では三九・四%と少し回復するが、他の階級は五二・六%だから、依然として差が大きい。

若いアンダークラス男性は抑うつ傾向にある

若いアンダークラス男性の不幸な実態は、その抑うつ傾向についてみると、さらに明らかになる。

二〇一五年SSM調査と二〇一六年首都圏調査では、K6(ケー・シックス)と呼ばれる抑うつ傾向を測定する尺度が、設問に盛り込まれている。

これは「いらいらする」「絶望的な感じになる」「そわそわして、落ち着かない」「気持ちがめいって、何をしても気が晴れない」「何をするのもおっくうな気持ちになる」「自分は何の価値もない人間のような気持ちになる」という六つの項目からできていて、そのようなことがどの程度あったかを「いつも」「たいてい」「ときどき」「少しだけ」「まったくない」の五段階で回答してもらうものである。

六つの回答を〇点から四点に得点化して合計すれば、二四点満点となるが、この得点が九点以上だと、うつ病や不安障害の可能性が高いとされている。

そこで、この得点が九点以上だった人の比率を、アンダークラスとそれ以外で比較したのが、図表5である。九点以上の人の比率は、若い人ほど多いが、アンダークラスとそれ以外の差が非常にはっきりしている。

二〇歳代の場合、アンダークラス男性では四二・五%が九点以上だが、その他の階級ではそれぞれ二八・七%と低い。九点以上の比率は、年齢とともに下がっていくが、アンダークラスとそれ以外の差は五〇歳代になってもなくならない。

図表5 アンダークラスとその他の階級の抑うつ傾向(男性・20-59歳) 出典)2015年SSM調査データから算出。 注)K6得点が9点以上の比率。
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若者は、大人より抑うつ傾向が強い。「絶望的な感じになる」「気持ちがめいって、何をしても気が晴れない」「自分は何の価値もない人間のような気持ちになる」などといったことが、大人より多い。

それは若いがゆえの未熟さ、多感さから来る部分もあるのかもしれないが、それだけではない。階級による違いがある。雇用の劣化と就職難からアンダークラスになった若者たちは、そうでない若者たち以上に、苦しんでいるのである。

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