在仏ジャーナリストが読む「ゴーン事件の行方」

「ゴーンの復帰はない。ただし…」

仏の逆襲

カルロス・ゴーン事件は、前代未聞の事態が続いている。

特捜部案件では検察の“いいなり”だった裁判所が、「勾留延長」を退け、12月20日、保釈が決定的となった。

それを不服とした特捜部は、最初は「海外が絡むから無理」とされていた個人的な投資損失18億5000万円の会社への付け替えと、その損失保証をしたサウジアラビア人への16億円の送金が、会社法違反(特別背任)に当たるとして再逮捕した。

日本では、「そこまでやるか。外に出したくないから再逮捕した。検察に逆らうものは許さず、外部の評判は気にしない唯我独尊組織の特捜部が復活した」(司法関係者)と、驚きの声があがった。

この展開はまったく読めなかったわけで、日本がびっくりなら、仏はもっと大騒ぎしているのではないか。

 

というのは、日本のメディアが伝える仏の反応は、「この事件は西川広人・日産社長らが引き起こしたクーデターである」というもので、日産の意を受けた検察捜査と、「推定無罪」の原則を無視、否認を理由に長期勾留する「人質司法」を批判していた。再逮捕は、批判を倍加させそうだ。

ゴーン容疑者と大鶴基成弁護士を主任とする弁護団は、特別背任での再逮捕は予想しておらず、12月30日の勾留満期を迎えての金融商品取引法違反(有価証券報告書への40億円分の役員報酬の不記載)での2回目の起訴と、それを受けての保釈を想定、「反撃」の準備にかかっていた。保釈は延びたが、作戦に変更はない。

「ゴーン氏は黙っているつもりはない。保釈後、すぐに外人記者クラブで記者会見をする方針。同時に、仏でルノーと調整、共同戦線を張る準備をしている」(ゴーン容疑者の周辺関係者)

再逮捕は想定外だったが、国内外の世論を気にする裁判所は、勾留を長引かせるつもりはあるまい。最初の勾留期限が19年1月1日で満期が1月11日。そこで起訴される。起訴後勾留は考え難いだけに、保釈され、そこからゴーン容疑者の反撃が始まる。

ルノーは仏政府が出資する国有企業。ゴーン容疑者がルノーと連携、反撃に出るということは、「仏の逆襲」を意味する。

ただ、仏では、ゴーン容疑者の逮捕と長期拘留は、それほど深刻に受け止められているわけではないという。パリ在住ジャーナリストの広岡裕児氏が解説する。

「フランスの社会もフランス人も二極化しています。そのなかで、普通の大衆レベルの反応は、『ゴーンは悪いことをしたに違いない』というもの。そもそもプロ経営者とは、そんなものだと思っている。高い給料を取り、赤字でも報酬を受け取って平然とし、税金を払いたがらないのがプロ経営者。だから、ゴーン逮捕に驚いたり、日本の捜査を批判するようなことはありません」

一方で、経営幹部など経営者に近い立場の支配層は、ゴーン逮捕は「明日は我が身」なので、「推定無罪」と日本を批判する。