人口減少は本当に危機か? 大問題でないと言える「シンプルな理由」

カギとなる格差婚と少子化の関係性
赤川 学 プロフィール

人口減少で困るのは誰か

では、大した問題ではないはずの人口減少が、なぜこれほどまで「危機」とされるのか。

高橋氏は、人口が減り続けたら困るのは地方公共団体の関係者だと冷徹にみている(12頁)。なぜなら人口が減ると、行政規模の簡素化のため市町村を合併しなければならないからだ。私見ながら、教育関係者もこれに含めて良いかもしれない。

また人口減少の危機を煽る世間の評論家も、なんでも人口減少のせいにすれば、誰も傷つかないので、いい方便になる(16頁)。

こうした人たちは、人口減少の危機を高唱することで、本を売り、名前を売り、政策を売りこむことができる。

人口減少危機論の背景に、これら利害関係者のポジショントークがあることは、かつて経済学者の小塩隆司氏も、『人口減少時代の社会保障改革』(2005,日本経済新聞社)のなかで指摘していた。

高橋氏によれば、実は政府も「人口増加のストーリーを地方公共団体の関係者に示しておけば、彼らはきっと満足するだろう」というのが本音であり、出生率が上がらず、人口問題政策が失敗しても、何らダメージがない。

それは政府が「人口減少は大きな問題ではない」と考えているからであり(22頁)、働き方改革や子育て安心プランなどの少子化対策も、「(人口減少を不安視している)国民の要望に応える」という政治的な意味があって取り組んでいるに過ぎない(29頁)。

要するに少子化対策や人口減少対策は、人口減少危機論に煽られた国民の不安に応えるポピュリズム的政策にすぎないといっているわけである。

公務員改革やアベノミクスの懐刀と目される高橋氏の発言だけに、きわめて説得力がある。

加えて本書は、筆者の年来の主張にも近く、多言を要しないほどの傑作に思える。

 

出生率を増やすには

ただそんな高橋氏も、日本で出生率を増やすのに最も効果的な対策(と考えられているもの)として人工妊娠中絶の禁止・抑制をとりあげている。

これを強制的に実施すれば人口は増えるだろうが(おそらく年間10万人ほど)、政府はそこまで踏み込んでおらず、人口政策にはさほど力を注いでいないと判断している。

そこで取り上げられる統計は、教育社会学者の舞田敏彦氏がグラフ化した、OECD35カ国における婚外子の割合と出生率の相関関係であり、両者の相関係数がプラス0.5になるというものである(36頁)。

(高橋洋一『未来年表』36頁より引用。元の表は、舞田敏彦「婚外子が増えれば日本の少子化問題は解決する?」『Newsweek』2017年7月13日)

高橋氏は、婚外子の割合が高い社会では、人工妊娠中絶が抑制されると想定しているのだろう。

もっともOECDを「先進国」扱いし、地球規模では一部に過ぎない先進国だけを対象にした統計から相関関係や因果関係を安易に論じることについて、筆者は『子どもが減って何が悪いか!』(2004)以降、注意を促してきた。

ただし、そんな国際比較のデータであっても、使い方によっては、有意義になることもある。