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医学部にいまだに残る差別に勝つための「受験校の選び方」

むしろ今年はチャンスと思った方がいい

多数の医学部で、女子差別や多浪差別などの不正入試が行われていた事実が次々と公表されている。医学部受験専門予備校で、文系出身者や、多浪生、女子受験生、再受験生など、医学部受験においてハンディキャップを負っている受験生を中心に指導をしてきた身としては、入試直前の受験生の不安な心中は察するに余りある。

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出願受付が始まった現在、「ほんとうにこの大学に出願して大丈夫なのか」と心配している人、「いったい何を頼りに勉強をすればよいのか」わからなくなっている人も多いだろう。

しかしここで断言しよう。必ず合格できるチャンスはある。むしろ、「今年こそチャンスだ」と。

今年からはどこの医学部も、受験生の属性によって点数操作をするという露骨な不正を働くことはできなくなった。今年のこの「不正の発覚」を逆手に取って、これまでだったら不正によって落とされていたかもしれない医学部に堂々と入り、医者という人生を歩もうじゃないか。

ただし、受験する大学は慎重に選ばなければならない。多くの「文系脳」の受験生を指導してきた経験をもとに、「数学の猛者たち」が集まる医学部受験で、ぎりぎりでも合格するための勉強法と、女子受験生・多浪生などのための受験校選びの戦略をお伝えしよう。

その前にまず、今回の医学部不正入試の調査結果から見えてくる、現在の医学部入試の状況を説明する。

 

今後も続く「合法的な女子差別」

東京医科大学の入試不正事件を受けて、文部科学省は全国の医科大学と医学部を持つ大学にアンケート調査を実施、9月初旬に結果を公表した。結果は、東京医科大学を除く、どの医学部も、「得点調整はしていない」(不正な受験生差別をしていない)との回答であった。

私も含めておそらくたくさんの人が思ったであろう。「嘘をつけ」と。

教会での罪の告白のように、自らすすんで「差別していました」と答えるバカ正直な組織はないということか。しかしそれこそバカである。同じ穴のムジナが、一匹だけに罪をなすりつけて、シラを切り通せると本気で思っているのか。

予想通り、12月に入り、徐々に本当の実態が明らかになってきた。やはり、一度暴かれ始めた不正は隠し通せない。組織のつく嘘は必ずバレる。内部告発を恐れたのであろう。多くの大学が、大なり小なりの不正入試を行ってきたことを自白しだした。これ以上、どこの大学が自白を始めても、もう誰も驚かないだろう。

幸いなのは、表向きは、今後は大っぴらには不正な入試はできなくなったことだ。しかし、それでも女子受験生等を合法的に排除するために、医学部が取りうる措置はまだある。

それは、「数学を難問化させる」という方法である。

医学部合格者のうちの多くの出身高校である全国の超一流有名私立高校(灘、麻布、開成など)は、どれも男子校である。それらの高校には、「理系頭」の超エリート男子学生たちが集まっている。そうした理系脳男子は、中高の先取り学習でさらに理系脳を鍛えられる。

女子校や共学校では、超優秀な学校でも、難関男子校ほどは数学を鍛えないため、結果として、難関男子校の生徒たちが受験する難関医学部は、数学のレベルが高くなり、男子の合格比率が高くなる傾向にあるのだ。

また、医学部を目指す女子受験生や、文系出身などの再受験生・多年浪人生などは、そういった数学が超得意な男子校生との競合を避け、超難関医学部をなるべく受験しないようにすることが多い。こうして、難関医学部は、男女比率にも差が出るようになる。

実際に、超難関医学部と言われるところでの女子入学者は少ない。

女子入学者の男女比を見ると、私立では、慶應義塾大学で19.4%、国公立でも、北海道大学が16.7%、千葉大学が17.1%、大阪大学が17.7%、京都大学が18.9%である。ついで、九州大学が20.5%、名古屋大が20.9%、東北大学が21.6%となっている。(2018年度入試結果より著者が計算。なお、東京大学は非公表)。

点数操作で女子差別を行っていた東京医科大学でも、女子入学者の比率は19.2%だ。先ほどの大学群が点数操作を行っていなかったとするならば、受験の前段階で(つまり出願の時点で)、それと同等の男女差を生み出していることになる。

女子入学者の比率が50%を超える医学部もある一方で、超難関と言われる医学部では、2割前後の女子受験生しか入学していないのだ。

また、心理学者で、広島大学の森永康子教授は、論文「「女性は数学が苦手」―ステレオタイプの影響について考える―」(2017年)で、「2012 年に 65 の国と地域で実施された PISA の結果、数学で女子より男子の成績が統計的に有意に高いのは 38 の国と地域であり、女子の方が高いのは 5つの国と地域であったと示している。

そして、この性差は徐々に縮まっているが、「数学が得意でない」「数学で良い成績を取っている」といった数学に関連した自己概念(math self-concept)では、多くの国で男子の方が有意に高い得点を示している」と報告している。つまり、全世界的に、女性は「数学が苦手だという自己認識」を持つ傾向があるということである。

日本においても、事情は上記の通りである。実際には、男女の数理的能力に差がないとしても、数学が苦手、あるいは苦手と思っている女子は、多い。学問的な最終決着はついていないものの、一般論としては「女子は数学が苦手」なのである。
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjpr/60/1/60_49/_pdf)

万が一、医学部内に、入学者の男子比率を高くしたいという浅はかなことを考える人たちがいまだ存在するとしたら、彼らは何を考えるだろうか。彼らは、多くの女子受験生が、難しい数学を避けざるを得ないことを知っている。そうすると、合法的にできることは一つしかない。数学を難問化させるのである。