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「人生100年時代」の生と死にどう向き合うか... 五木寛之からの箴言

口笛を吹きながら闇の中を歩け

これも知のあり方のひとつ

―新著の『眠れぬ夜のために』はこれまでの著作150余から厳選され、半世紀の思索を紡ぐ初の箴言集です。若々しくも力強い『青春の門』の言葉から、『大河の一滴』や『親鸞』の深遠な言葉まで五百余が収録されています。

今回は私の過去の著作をまとめるということで、心配もありました。

1966年にデビューしてから、自分でも数え切れないほど多くの本を書いてきました。そこからの引用となると、矛盾する文脈や不統一な論理があるのではないかと思ったわけです。編んでくれた人に聞くと「50年前から同じです」と言われた(笑)。

「あぁ、50年間進歩していないのだ」と思う一方で、「これでいいのだ」とも思い、感慨深いものがありましたね。

 

―テーマは、「人生の明暗」「故郷と日本人」「人間と歴史」「愛憎と哀歓」「流行歌と民衆」といった具合に、生死、歴史、社会、日々の健康や生活と幅広く、40もあります。

中学生の頃に読んだ芥川龍之介の『侏儒の言葉』を思い出します。短い文章の羅列ながら、印象が強い。この手のものは、一冊丸ごとを読むよりも読みやすいんじゃないかな。

かつては、トルストイ『戦争と平和』を頭から読むようなことが教養とされていました。けれど、好きなところからパラパラと数本を読むような読書スタイルがあっていいと思います。

これも知のあり方のひとつですから。そこに、何かの気休めになるような言葉があればなおよいでしょう。

―「二十一世紀とは深く長い夜の時代なのだ」という言葉が印象的です。

現代はとても生きづらい時代です。かつての「人生50年」の時代、人は背中に50トンの荷を負って人生を歩んでいました。いまや「人生100年」。荷の重さは変わらなくても時間が延びている。人生100年の荷は総量で100トンになっているのではないでしょうか。

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また歴史をみると、この長寿の時代は人類として初めて経験することなのです。

哲学も思想も芸術も、すべてが50年ほどの人生を前提にして構築されてきています。50歳以降の人間に向けての文化はまだないと言ってよいでしょう。

今我々は地図のない旅に出て、薄暗がりを歩いていくのだと実感しています。その始まりが現在でしょう。