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スイカの種を飲み込んでも、あまり害にならない「驚きのワケ」

季節はずれですが、知ってほしい

胃腸を通り抜け、無事に排出

果物を食べる時、邪魔になるのが「種」。しかし、除けてしまうその種子にこそ、植物が繁殖していくための叡智が詰まっている。

動くことのできない植物にとって、移動して分布を広げるチャンスは花粉を飛ばす時か、種子を飛ばす時の2回のみ。植物は、このわずかな機会に懸けている。

なかでもスイカは、大きな実のなかに種を散らばらせるという珍しい形をとっているが、この進化には相応の戦略があるのだ。

スイカは、もともと砂漠地帯に成育する過酷な環境の植物。鳥に食べさせて種子を運ばせるために、あの派手な縞模様と、赤や黄色という目立つ色の果実に発達したと考えられている。

 

さらに、種子そのものにも工夫が凝らされている。胃腸で消化されないように、種は硬いガラス質で覆われている。また、複雑に入り組んだ腸も難なくすり抜けられる形になっている。そのため、たとえ種を食べてしまっても、胃腸を通り抜け、無事に排出されるのだ。

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それだけでなく、種子の配置にも知恵が張り巡らされている。植物の果実には、一番外側の皮である「外果皮」、種子を包む「内果皮」と両者の間にある「中果皮」と呼ばれる部分がある。

スイカと同じウリ科のメロンは、種を包む内果皮が果実の中央にあり、中果皮の部分を食す。これは、甘い果肉と、ヌメリがあり体内に入りやすいワタで種を包み一ヵ所に固めることで、種周辺を一口で食べてもらい、体内に侵入するためだ。

しかしメロンの種は、人が食べる際には固まりごと取り除かれてしまう。一方、スイカは、その弱点を克服する、さらに高等な戦略を採っている。

私たちが食べるスイカの赤い部分は内果皮だ。スイカは、種子を包む内果皮を大きく発達させることで、種子が実のなかに散らばるようにした。こうして、人間であっても果肉と一緒に種を食べてしまう形状になりえたのである。

スイカの種を吐き出すという夏の風物詩こそ、スイカの進化の産物だったのだ。(征)

『週刊現代』2019年1月5・19日号より