「芸人とはなにか」ハチミツ二郎と田崎健太が酒を飲みながら語る

「面白至上主義者」の矜持
田崎 健太, ハチミツ二郎 プロフィール

田崎 THE MANZAI では、2013年大会の決勝大会に進出したのが最高成績。

二郎 東京予選で1位を獲って決勝進出しました。そのときも本番前、俺らはずっとたけしさんの楽屋にいるんですよ。もしかすると業界的には、(アントニオ)猪木と前田(日明)が一緒にいる、みたいな(笑)。

田崎 UWFから出戻った前田日明さんは、猪木さんとの対戦を望んだけれど実現しなかった。そして、試合中に長州さんの顔面を蹴り上げたことで、新日本プロレスから解雇されたという一件ですね。

二郎 俺はプロレスの見過ぎかもしれないけど、なんでもプロレスで考えちゃうんですよね。オフィス北野を辞めたときも、長州さんみたいに戻れるんじゃないかっていう気持ちだったし。

田崎 長州さんは二度、新日本プロレスに出戻っていますからね(笑)。今も新日本と関係はないのに、新日本のジムで練習していますし。

 

爆笑問題・太田の忘れられない言葉

田崎 二郎さんの姿をテレビであまり観ないのは、たけしさんの「ひな壇芸人になるな」という教えに従っているからですか?

二郎 昔、爆笑問題の太田(光)さんのライブに出させてもらったことがあるんです。太田さんがいるとみんな萎縮しちゃう。誰も控室に遊びに行かないです。それでも喫煙室で会っちゃう。みんなは挨拶だけして逃げちゃうんですけど、太田さんは俺にだけ話しかけてくるんですよ。それで、「どうやったらテレビに出られるか教えてあげようか?」って言ってきたんです。

田崎 二郎さんから訊ねたのではないですよね?

二郎 もちろん何も聞いていないんですよ(笑)。そう言われれば、俺は「はい」って言うじゃないですか。そうしたら、「つまらないことばかり言ってりゃ出れるんだよ」って。

田崎 太田さんらしい(笑)。

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二郎 俺たちは劇場に出ているから、目の前の客を笑わせる、面白いことしか言っちゃいけないという感覚。でも(テレビの)観覧客というのは、本当につまんないことを言っていればいいんですよ。

昔、(フジテレビ系の)『ごきげんよう』に出たとき、(タレントの)LiLiCoさんと一緒だったんです。こちちのトークは弾んで、向こうは何も面白いことを言っていない。でも、彼女の方が拍手も笑いも多かったんです。要するに表情とか言い方なんですよね。それで観覧客はわーっとなる。

俺たちはそっちには行かない、いや、行けないですよ。ハルク・ホーガンになるつもりだったのに、気がついたらカール・ゴッチになっている(笑)。

田崎 強いけど地味で、玄人受けするレスラー。

二郎 さっきの談志さんの言葉じゃないですけれど、俺たちは同業者から「こいつ、強い」って思われないとやりたくないんですよ。例を出したら悪いんですが、勝俣(州和)さんや出川(哲郎)さんは、明るくて元気が良くて、絶対にスタジオを沸かせられます。でも、あの人たちがなんば花月やルミネTHEよしもとで〝トリ〟を取れるかと言ったら、また違う話なんですよ。

「カネを出す客」の覚悟に応えたい

田崎 ぼくは中田カウス・ボタンが好きで、何度も劇場に見に行っているんですが、二人は必ず〝トリ〟。ときに前に出てきた芸人が滑り倒すときがありますよね。最後に出てくるカウス・ボタンは、その場の空気を読んで、盛り上がっているときは高めのテンションで始めて、冷え込んでいるときは、ゆっくりと上げていく。これが板の上に立ち続けている芸人の凄さだなと感心してます。

二郎 俺らも劇場には〝トリ〟で出ているんですけれど、トリっていうのは、本来はギャラを「総取り」するから〝トリ〟なんです。でも吉本の場合は関係ない。テレビに出ていたときに比べて、確実に年収は下がりました。

田崎 東京ダイナマイトも、その日の客席を感じてネタを微調整していくんですか?

二郎 そうですね。加えて前の芸人が歌のネタをやっていたら、こちらは別のをやるとか。

田崎 かつての新日本プロレスでは、「前座のレスラーは大技を使ってはいけない」という不文律がありました。漫才の世界では逆なんですね。トリに出て来る芸人からは、お金を払ってくれる客に満足して帰ってもらう義務を背負っている、という凄みを感じます。

二郎 お金ってすごく分かりやすい。500円でも1000円でも、お金を払ってくれる客に対してはネタが出来る。でも、スーパーの広場とかで見に来ている人にはネタは出来ないですね。