「芸人とはなにか」ハチミツ二郎と田崎健太が酒を飲みながら語る

「面白至上主義者」の矜持
田崎 健太, ハチミツ二郎 プロフィール

品川庄司とのライバル関係

田崎 二郎さんは岡山生まれ。高校卒業後に芸人を志して上京。

二郎 プロレスラーか芸人になろうと思っていたんです。ただ、当時、プロレスは身長180cm以下は考えられなかった。それで芸人になろうと。

田崎 吉本総合芸能学院(NSC)東京校の一期生で、品川庄司と同期。芸人を志す人間ばかりですから、競争も激しかったんでしょうね?

二郎 (首を振って)ぼくは殴り合いというか、喧嘩の毎日だろうと思っていたんです。で、そういうつもりで来ていたのは、500人のうち俺と品川(祐)だけ。勝手な勘違いでした(笑)。

田崎 品川庄司の二人は当時から面白かったんですか?

二郎 今と一緒です。俺と品川は、もう口も利かないぐらいに意識していたいんですけれど、そのときから人生は決まっていたというか……。

俺は授業でドッカン、ドッカン受けるんですよ。みんなプロ志望の奴ら相手です。でも品川庄司はウケない。その後、生徒の中から選抜メンバーを選んで客前でやるんですけれど、ぼくたちは選ばれず、品川庄司は大将として起用される。実際に、彼らは客前では受けるんです。俺は普段の授業ではすごく受けるけど、試験まで辿り着かないから、俺の相方はやめていくんですよ。それで、ぼくは吉本をクビにされたんです。

田崎 その後、二郎さんはインディーズでの活動を経て、先ほど話が出たように、たけしさんのオフィス北野に所属しますね。2000年代は『エンタの神様』(日本テレビ系)『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)というお笑い番組が大人気となりました。その中で、二郎さんの東京ダイナマイトは、波に乗りきれなかったという印象があります。

二郎 『エンタの神様』で、番組側から「ボケとツッコミを替えろ」って言われて、それで5本収録したことがあったんです。普段は(相方の)松田(大輔)がボケで俺がツッコミなんですが、視聴者に分かりやすくするためか、その役割を替えろと言われた。しかし、結局それはオンエアされなかった。最後の最後で、「やっぱり駄目だな」って元に戻したんです。

そして満を持してオンエアーの日、(2004年アテネ)オリンピックで、俺らのネタの間にヤワラ(谷亮子)ちゃんが金メダルを獲った。当然、視聴者は(試合を中継している)NHKに行きますよね。そうしたら翌週、俺らのオンエアーなくなりました。ヤワラちゃんの金(が原因)でも、視聴率が低かったら駄目なんです。そこまで視聴率を追求するのはあっぱれですよ。いまだに大喜利とか、ヤワラちゃんをネタにするときは悪く言ってます(笑)。

 

ビートたけしと「共演NG」?

田崎 2008年、二郎さんはオフィス北野を退社。慕っていた、たけしさんの元を離れたのはどうしてですか?

二郎 今までどこでも話していなかったんですが……。今年、オフィス北野があんなことになりましたよね。昔から、現場(芸人)とフロントの仲が悪かった。ああなるのは分かっていたんです。ただ、(問題が弾けるのは)たけしさんが亡くなった後のことだと思っていましたが。(つまみ)枝豆さんから、「(オフィス北野は)いつか駄目になる。お前たちはネタが出来る。俺とタカ坊(ガダルカナル・タカ)で殿と話をつけるから、抜けろ」と。

田崎 つまり、二郎さんたちは漫才、コントの腕があるから、その力があるうちに他の事務所に行けと、枝豆さんとガダルカナル・タカさんが気を遣ってくれた。

二郎 そうです。枝豆さんが、いち早く脱藩させてくれた。

田崎 辞めるときに、殿こと、たけしさんと挨拶されたんですか?

二郎 枝豆さんと話をしてから、1ヵ月ぐらいして会ったんですよ。ガダルカナル・タカさんに付き合ってもらって挨拶に行きました。そしたら楽屋に入るなり、たけさんが「遅いよ」って。俺らは挨拶に行くのが遅かったのかと思ったら、違った。「辞めるのが遅いよ」って。「俺の事務所は、俺のところにいなきゃいけない奴の事務所なんだ。お前らはネタが出来るんだから、出た方がいいよ」って。

田崎 たけしさんからアドバイスはありましたか?

二郎 「とにかく寄席に出ろ」と。そのときは、『レッドカーペット』も『エンタ(の神様)』もショートネタブーム。そしてひな壇芸人。でもたけしさんは、短いネタはやるな、ひな壇やるなって。「寄席芸人がまた勝っていく時代になるから」と。

田崎 つまり、寄席に出て、客の前である一定以上の時間をこなすことが、芸人としての地力となる。それをやれとおっしゃった。

二郎 ええ。それで別れ際、ぼくらが楽屋から出ようとしたら、たけしさんが「おい!」って呼ぶんです。「頑張れよ」って言われるのかなと思ったら、「また一緒に番組やろうぜ」って。

Photo by gettyimages

田崎 ぼくは二郎さんの出ている番組を全て観ているわけではないですが、その後、たけしさんと共演しているのは記憶にないんですが……。

二郎 テレビでは一度も共演していないです。ある(放送)作家の人に聞いたら、たけしさんとぼくたちは「共演NG」だと。ダイナマイトとたけしは駄目だ、ということになっているらしいです。

田崎 つまり……東京ダイナマイトはオフィス北野を辞めた。たけしさんと何かあったのだろうから、共演させない方がいいという判断をしている。

二郎 忖度ですよ。たけしさんの機嫌を損ねたくないから。噂レベルの話であっても、危なそうな人間を起用するのはやめよう、人畜無害な奴を使おう。それが今のテレビです。

『全身芸人』で、毒蝮三太夫さんは「素人ウケを狙う芸はせこい」という(立川)談志師匠の言葉を意識していると書いてあったじゃないですか。俺も若手のときに、談志師匠に「お前は勲章を欲しがるな」と言われたことがあったんです。でも、それを守れなかった。

ぼくらはM-1で優勝できなかったけれど、「THE MANZAI 」だけはどうしても獲りたかった。どんだけ周りが忖度して、共演NG扱いされても、THE MANZAI で勝ち上がれば(大会最高顧問の)たけしさんと一緒に出られる。だから優勝して、たけしさんからトロフィーを受け取って、その場でたけしさんにプレゼントするつもりでした。