「目に見える」Amazonと「目に見えない」Amazon
技術者やIT業界関係者には常識だが、そうでない人には意外と知られていないことがある。
「Amazonという会社は、実質的に2つある」ということだ。1つは、私たちがよく知るウェブ通販などの会社としてのAmazon。そしてもう1つは、「AWS」こと、「Amazon Web Service」という会社だ。前者を「目に見える」Amazon、後者を「目に見えない」Amazonと言い換えてもいい。
筆者は11月末、AWSの年次開発者会議「re:Invent 2018」を取材した。ラスベガスの街中を使い、4日間にわたって世界中から5万人もの開発者が来場する巨大イベントだ。
このカンファレンスは、ネットの絡むサービス開発のトレンドの最前線でもある。これからのコンピュータとサービスがどこに行こうとしているのか──。AWSは、明確に「データ中心主義の世界」を志向している。

最大顧客はAmazon
最初に少し、AWSがどういう会社なのかを説明しておきたい。
AWSはAmazonの子会社だが、通販ではなく「ネットサービスのインフラ」を提供する会社だ。そもそも、Amazonを支えているのはAWSが構築したインフラであり、AmazonはAWSにとっての最大顧客の1つである。
ただし、冒頭で述べたように、AWSとAmazonは資本関係はあるものの「別の会社」だ。AmazonのデータをAWSが使うわけではない。AWSはあくまで「インフラ」の会社であり、Amazonが蓄積する膨大なデータの中身には、いっさい手を出さない。
個人向けサービスをしてるわけではないので表からは見えづらいが、通販におけるAmazonに勝るとも劣らない比率で、ネットの世界に影響力をもっている。なにしろ、企業向けクラウドサービスの分野では、じつに51.8%もの市場シェアを占めているのだ。
世界最大の映像配信サービスであるNetflixは、動画の配信から圧縮作業まで、その多くの部分をAWSで行っており、自社内にサーバーをもっていない。みなさんが日常的に使うネットサービスの多くも、スマホやゲーム機の対戦サービスも、じつはその裏側でAWSが動いているのである。
大手はもちろん、ネットサービスやアプリを立ち上げるスタートアップ企業にとって、AWSのような事業者は必要不可欠な存在となっている。
