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習近平の演説を熟読して判明「2019年、中国経済の実像」

あの国は今、正念場を迎えている

泣きっ面に蜂

2018年の中国経済を漢字一字で表すなら、「霜」だろう。

7月に始まった米中貿易戦争は、解決の糸口が見つからないまま越年するが、明らかにアメリカ側よりも中国側の方が、ダメージが大きい。

加えて今月1日には、中国の来たる「5G時代」の牽引役を果たす華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長が、アメリカの要請によってカナダで逮捕された。「華為排除」、ひいては「中国企業排除」の動きが、アメリカ国内ばかりか、その同盟国などに広がりを見せていることで、中国経済への悪影響が増している。

先日、来日した中国の著名な経済学者と意見交換したが、私が「アメリカとの対立による中国経済の悪化をどう見ているか?」と質問すると、ため息交じりにこう答えた。

「もともと中国経済は、減速期に入っていた。そこへもって、アメリカとの対立が重なった。いわば、『雪上加霜』(雪の上に霜が加わる)の状況になってしまったのだ。このままでは、悲観的な未来しか予想できない」

日本語で言うなら、泣きっ面に蜂ということだ。まさに中国経済は、正念場を迎えているのである。

そんな中、先週、2019年の中国経済を占う上で重要な二つの動きがあった。12月18日に北京の人民大会堂で開かれた「改革開放40周年祝賀大会」と、19日から21日まで北京で開かれた「中央経済工作会議」である。

今回は、改革開放40周年祝賀大会について、詳細に見ていきたい。

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習近平の演説が変化した!

1978年12月18日、中国共産党第11期中央委員会第3回全体会議(11期3中全会)が開かれ、鄧小平の指導の下、改革開放政策が採択された。

その2年前に毛沢東主席が死去し、10年も続いた文化大革命の嵐が終息した。その混乱を収拾するため、政治的には社会主義を堅持しながらも、経済的には国民に一定の自由を与え、世界に門戸を開いていく、そして世界の力を借りて中国経済を発展させていく政策に転じたのだ。

それから40年、習近平政権は改革開放政策をどう総括し、今後どうしていくのか。注目された習近平主席の演説を、中国中央テレビのインターネット生中継で見たが、1時間を超える長いものだった(習主席の演説はいつも長い)。

 

まず、冒頭の言葉は次の通りだ。

「1978年12月18日は、中華民族の歴史上、中国共産党の歴史上、中華人民共和国の歴史上、いずれも名を残す重要な日である。この日、わが党は11期3中全会を開き、新中国成立以来、党の歴史上、深遠な意義を持つ偉大な転換を実現した。そして改革開放と社会主義現代化の偉大なる道のりが開かれたのだ。

本日、われわれはここで重々しく集会を開き、改革開放40年の光り輝く過程を回顧する。改革開放の偉大な成果と貴重な経験を総括し、全党全国各民族の人民が、新時代に継続して改革開放を前進していけるよう動員し、『二つの百年』(2021年の中国共産党100周年と2049年の建国100周年)の奮闘目標を実現させ、中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現させるため、たゆまず奮闘していくのだ」

習主席は、「改革開放政策」と、自らの政権のスローガンである「二つの百年」「中華民族の偉大なる復興という中国の夢の実現」とを結びつけている。つまり自らの政権は、改革開放路線の延長線上にあると捉えているということだ。

続く一節は、聞いていてハッとさせられた。

「(1978年12月)当時、世界経済は快速で発展し、科学技術は日進月歩で進歩した。だが『文化大革命』10年の内乱で、中国経済は崩壊の危機に瀕しており、人民の衣食住問題が発生し、国家建設の百年の大業が待たれた。共産党内には『文化大革命』の錯誤を糺す強烈な要求がなされ、党と国家を危機から再生奮起させることが求められていた。

鄧小平同志は指摘した。『もしもいま改革を実行しないのであれば、われわれの現代化の事業と社会主義事業は葬り去られてしまうだろう』。

鄧小平同志の領導と先輩革命家たちの支持のもと、11期3中全会は、長期にわたった『左』の錯誤の重々しい束縛を突破し、『二つの凡そ』(凡そ毛沢東主席が決定した政策と、毛沢東主席が指示したことへの絶対忠誠)の誤った方針を批判した。

そして毛沢東思想の科学的体系を十分肯定的に完備し、正確に把握し、真理の標準問題の討論を高度に評価し、『階級闘争を綱領とする』ことを果断に終わらせ、マルクス主義の思想路線と政治路線、組織路線を新たに確立していった。その時、わが国の改革開放の大幕が開かれたのだ」

2012年11月、第18回共産党大会で習近平が総書記に選出された時、私は北京の人民大会堂で現場取材していて、「毛沢東時代の再来」を予感した。それまでの江沢民、胡錦濤時代は、鄧小平時代の延長の感があったが、習近平新総書記の発言や指示は、毛沢東語録や毛沢東思想が満載だったからだ。

翌2013年になると、「七不講」(民主など7つの講義禁止)や「二つの正義」(毛沢東も鄧小平も共に正しい)など、むくむくと「毛沢東色」が顔をもたげ、同年12月には毛沢東主席生誕120周年イベントを、天安門広場で盛大に挙行。いつのまにか「毛主席の業績は(晩年の文化大革命も含めて)すべて正しい」に変わっていった。

だが今回、習近平主席は、誰よりも尊敬する毛沢東主席が犯した「文化大革命」や、死後の個人崇拝の根拠となった「二つの凡そ」を否定してみせたのである。

正直言って、ここまで習近平主席が「譲歩」する、もしくは譲歩を余儀なくされるとは思っていなかった。国内経済の悪化と米トランプ政権の攻勢という内外の「ダブル圧力」を受けて、ここは一度身を引いて態勢を立て直そうということなのだろう。