# 財政

新防衛大綱を見て思う…やっぱり「空母」の議論を避けるのは不自然だ

「あくまで防衛目的」とはいうけれど…

SF小説の領域に…

先週火曜日(12月18日)、安倍内閣は新たな「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」(中期防)を閣議決定した。その特色は、短い滑走で離陸して垂直に着陸できるアメリカ製の「F35B」戦闘機の購入を前提に、護衛艦「いずも」型2隻をこれまで自衛隊が保有していなかった「空母」に改装するほか、これまで防衛の対象ではなかった宇宙や、サイバー空間、電磁波を扱う電子戦でも戦える体制の整備を打ち出したことだ。

中国や北朝鮮、ロシアがサイバー攻撃を活発化したり、人工衛星の破壊力の向上に取り組んでいることを黙認できず、タブーだった分野やSF小説の領域にも踏み込む戦略を打ち出したことは、われわれ国民にとっても大きな“事件”と言わざるを得ないのではないだろうか。

そのコストは膨大で、国家予算の初の100兆円乗せの一因ともなった。その陰に、貿易赤字減らしに固執するトランプ米大統領への配慮の影が付き纏うのも事実だ。

筆者は防衛・安全保障についてはド素人の経済ジャーナリストだが、さすがに、今回の防衛大綱と中期防には無関心でいられない。本稿で読者とこの2つの重要文書を読み込み、その意味とコストを考えてみたい。

 

「統合機動防衛力」とはなにか

まずは、防衛計画の大綱と中期防の概略だ。防衛大綱は安全保障政策の基本方針で、概ね向こう10年間の防衛力や運用のあり方を示す。最初の大綱は、米ソ冷戦下の1976年に三木内閣が策定したもので、今回は5回目になる。

中期防は、防衛大綱に基づき、部隊の編成や、調達する装備のリスト、必要な経費などを定める5カ年計画だ。1985年に、中曽根内閣が策定したものが最初で、かつて防衛庁の内部資料だった「中期業務見積もり」を政府の計画に格上げした経緯がある。

これまでの代表的な大綱を列挙しておくと、1976年の大綱は、旧ソ連の侵攻を想定し、全国各地に自衛隊を満遍なく配備する「基盤的防衛力構想」を提唱。民主党政権下の2010年大綱は、中国を意識して南西諸島防衛を重視する「動的防衛力」を掲げた。前回2013年の大綱は安倍政権がまとめもので、北朝鮮も念頭に置き、陸海空の一体運用を意識した「統合機動防衛力」を打ち出したのが特色だった。

これらに対して、今回の大綱は、空母の保有や、宇宙、サイバー、電子戦の能力整備も打ち出したのが特殊だ。防衛省は、それらを総括して「多次元統合防衛力の強化」と呼んでいる。

日本を取り巻く国々の動向について、政府は大綱で次のような認識を明らかにしている。まず、米国は、同盟国やパートナーに対し、責任分担の増加を求めており、NATO(北大西洋条約機構)加盟国は国防費を増加させているという。

一方、中国については、「安全保障上の強い懸念、注視していく必要がある」と断定。軍事力を質・量の両面で広範かつ急速に強化させており、中でも相手の指揮系統の混乱を可能とするサイバー領域や電磁波領域、対衛星兵器の開発を始めとする宇宙領域など、新たな領域を重視していると強い危機感を表した。

リアルの世界でも、東シナ海を始めとする海空域において、軍事活動を拡大・活発化させており、特に「わが国領土の尖閣諸島周辺においては、断続的な領海侵入を行っている」ことや、「太平洋や日本海においても軍事活動を拡大・活発化させている」ことを指摘した。

中国外務省は、こうした防衛大綱に対し、担当者が即日記者会見し、「中国の脅威をあおる日本のやり方に強烈な不満と反対を表明する。日本にはすでに厳正な申し入れをした」と不満をあらわにした。