トヨタ「レクサス福岡東」全員接客が起こした奇跡

ドラマメソッドの感動が信用を創造する
平野 秀典 プロフィール

ゲストと一対一の関係性を生み出す「全員接客」

現在、感謝レターに登場した担当セールスコンサルタントは別の販売店へ移動していますが、レクサス福岡東は、ゼネラルマネージャー仲上昌樹氏のリーダーシップのもと、「全員接客」(=全員主役)をプリンシプルに掲げ、顧客とのエンゲージメント(信頼の絆)を構築しながらファンを増やし続けています。

 

接客に限らず、世の中の優れた事業やヒット商品の多くは、そもそもの始まりが「一対一」の関係性だった確率が高いのです。大切な人の役に立ちたい、目の前の人を喜ばせたいというシンプルな想いと熱意から、事業アイデアや商品の発想が生まれ、それが周りの人の評判を呼び口コミで広がり、世の中を変える事業やヒット商品が生まれたのです。

大量生産大量消費の西洋文化と異なる成り立ちを持つ日本の伝統文化には、一対一の関係性の中で「感動」を共有する視点が流れています。

「自分よし、相手よし、世間よし」の「三方よし」で有名な近江商人の「商売十訓」の中には、次のような言葉があります。

  売る前のお世辞よりも売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる
  無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ

俗にいう「売りっぱなし」という一対多数のマインドの対極にある、一対一のエンゲージメントを大切にするビジネスマインドです。

  資金の少なきを憂うなかれ、信用の足らざるを憂うべし
  商売は、世の為、人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なり

近江商人は、一対一の「信用」や「信頼」を大切にし、世のため人のためになる商売をし、最大の儲けを得るビジネスモデルを構築していました。

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購入時の感動が時を経てさらに増して行く秘訣

全員が主役の意識で、目の前のたった一人のお客様を大切にし、商品を売る前に信用や人間性を売るというシンプルな仕掛けを、職場のチーム全員が実践すると、いったいどのようなことが起こるのか?

レクサス福岡東は、全国レクサス店の社内評価基準である3年後4年半後の満足度でも常に上位の成績を続けています。

購入時の感動が、時を経るごとにさらに増えていくという実績は、他の業界でもなかなか見られない驚くべき成果です。まさに近江商人の「永遠の客をつくる」の実践です。

一時的な熱狂型感動ではなく、信頼を基にした持続する感動を生み出すマインドは、研修で繰り返し行う「表現力ワーク」でその原点が培われます。

レクサス福岡東のテクニカルスタッフが研修中に書いた次のレターは、大切な息子への愛情というモチーフを使い、仕事への価値観と人生の価値観をコラボレーションさせる大切なきっかけとなっています。

「車のお医者さん」

お前は最近よく、パパは昔サッカー選手だったの? とか、野球選手だったの? とか、訳のわからないことばかり聞いてくるよね。最近気づいたけど、自分が今やりたいことを話してくれているんだよね。

実はパパは、車のお医者さんなんだよ。わかるかな?

普段、自分たちが乗ることがないような高い車を故障が出ないようにしたり、故障した車を修理したりしてるんだよ。

人の命を乗せて走る車に、もしものことがあったらいけないので、時間がかかったりして帰りが遅くて遊んでやれずに寂しいと思うけど、パパは仲間と一緒に全力で仕事をして、「ありがとう」という言葉を毎日もらっているよ。サッカー選手や野球選手じゃないけど、同じように人に喜んでもらえる仕事をしてるから。

今度ゆっくり休める時に、お前の大好きなクワガタを取りに行こう。

パパの車でね。

レクサス福岡東の好業績の秘訣が、ひと時流行った特別なサプライズで感動させるというような表面的なやり方ではなく、信頼の絆をつなぎ感動を共有するという、本質的でシンプルな仕掛けであることは、AIと共存する社会を目前に控えた今、人間性や人柄の価値が上がる流れの中での必然の結果なのだと思います。