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南青山「児童相談所排斥運動」で露呈した、根深い偏見と悲しき現実

今、虐待について知っておきたいこと

悲惨な虐待事件が後を絶たない

今年3月、目黒区の5歳児船戸結愛(ゆあ)ちゃんが、両親から度重なる虐待を受け、「もうおねがい ゆるして」という悲痛な「反省文」を残して死亡した事件の後、社会は大きな悲しみと怒りに包まれた。

どうしてこの小さな命を守れなかったのかという悲しみ、そしてこれほどまでに少女を追い詰めた挙句、死に至らしめた親への怒り。わが国において、悲惨な虐待事件は後を絶たず、ここ何十年もの間、増加の一途をたどっている。

このニュースを受けて、誰もが児童相談所がもっと適切に支援ができなかったのか、親から子どもを一時的に離して保護するような手段が取れなかったのかなどと、歯がゆく思ったことだろう。

これは、直接的には児童相談所に対する批判であるが、同時に子どもを守る砦として、児童相談所に対するわれわれの期待が大きいことの表れでもある。

結愛ちゃんのケースでは、残念ながら最悪の結末を迎えてしまったが、児童相談所によって守られ、助けられた子どもたちは数多くいるはずである。

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南青山で起きた児童相談所排斥運動

このように、児童相談所の役割の大きさには、誰もが一致して理解を示し、期待をする一方で、東京の港区南青山では、突如持ち上がった児童相談所建設問題に対して、「迷惑施設」として住民による反対運動が起こっている。

ニュースで報じられた住民の声は、もちろん賛成意見もあったが、狭量としか言いようのない反対意見が目立った。

 

たとえば、「南青山は自分でしっかりお金を稼いで住むべき場所」「いろいろな習い事をしている子どもが多く、学校のレベルが高い。施設の子が来れば、逆につらい気持ちになるのではないか」「不動産の価値が下がる。街の魅力が半減し、街の発展のブレーキとなる」などの意見があった。

くだらない「選民意識」で勝手に自分をレベルの高い特別な存在と思い込み、「レベルの低い人」を見下す姿勢には嫌悪感しかない。レベルが低いのは、一体どっちのほうだろう。

また、テレビのワイドショーでは、お笑い芸人の松嶋尚美が、住民の反対意見に理解を示し、「(近所に児童相談所ができたら)自分なら引越しするかもしれない」「親に暴行された子どもが、外に飛び出して暴力を振るったり、カツアゲをしたりするかもしれない」などと語った。

これらの意見には、児童相談所という施設に対する偏見や無知が満ち溢れている。