お金に縛られずに生きていく方法は本当にないのか?

連載ルポ:お金の正体 ⑥
海猫沢 めろん プロフィール

小飼: 人類がお金を必要とする、というよりも、お金というのは便利なんですよ。お金を介することによって、気に食わない人とでもやり取りができる。しかも、さっき言ったように、かさばらないし腐らない。

これを突き詰めていくと、やっぱりビットコインのような台帳になるわけです。

でも、なんでこんな紙っ切れが、満漢全席のテーブルのいっぱいの食事とおんなじなんだよっていうふうに言われると、僕もスンナリとは答えられません。

——僕も取材するなかで、経済というのはやっぱり回さなきゃいけないんだなっていうことがわかってきたんだけど、ネズミが車輪の中で回っているような感じで嫌だなっていうのもあるんですよ。これ、止めちゃいけないのかな? と思ったりします。

小飼: でもお金のことを全く抜きにしても、物事って回ってますよね。お金がなくても物質は勝手に循環しているわけです。それなら、むしろ上手に回る方法を考えたほうがよくて、お金はそれに最適だということなんです。

うう……やはり生きていくためにはお金は必要なのか……。

 

普段から本気を出しては駄目

たしかに、お金というのは、人間の欲望にある程度方向性をつけるために便利なのかもしれない。お金というものがあるおかげで、多様な欲望を抱えた人間たちのベクトルが一致してくる。そういうふうに社会が効率的に動いて、人を幸せにする……そういうことなのかもしれない。

と、自分を納得させようとしたところで小飼さんが一言……。

小飼: ところで、めろんさんは、ベーシック・インカム的な最低限のお金が着実に入ってくるなら、もうそれでOKみたいな感じですか?

ベーシック・インカムとは、簡単に言えば早くからもらえる年金みたいなものだ。

毎月一定の金額が政府から個人に支給されるが、そのかわり社会保険などのセーフティネットが薄くなると言われている。実際にフィンランドでは実験的に実施されたこともある。実際にうまくいくのかどうかはまだ未知数で、問題も無数にあるのだが、ぼくはこの制度には賛成だ。

かつて90年代にイギリスのマンチェスターからオアシスなどのミュージシャンがいっぱい出てきた時代があった。当時のイギリスは失業保険が手厚かったため、彼らはそれで食べていくことができた。その結果、マンチェスターではアートや音楽などの文化が盛り上がったという。そういうのは悪くない。

——賛成ですね。たぶんベーシック・インカムがあったら、僕はもうずっとアニメとゲームの毎日ですね。あとは好きなことやってると思います。

小飼: 私も悪くないと思ってます。今の企業がやってる、週5日で出勤時間とか抜きで8時間拘束されるって、これはちょっと非人間的だと思います。人が本気出せるのって、週労2日くらいでしょう? 実際週40時間勤務してる人達も、さらに月160時間とか残業してる人達も、中味をよく見てみると、ダベってるだけだったりするしね。

——ぼく20代の頃にサラリーマンを3年やってたんですが。そのときが人生で1番病んでました……。朝起きて定時にある場所に行って、そこにいて、というそのルーティンみたいなのが駄目で、明日7時に起きなきゃって思うと、前日からもう寝れないんですよ。

小飼: 週に5日も働ける人というのは、もはやワーカーというより、Player なんですよ。勤労ゲームというゲームをやってるんですよ。そうでなくてそんなに拘束されるというのはねえ…。

一応、統計的には労働時間は減ってることにはなってるんです。確か日本の労働者の労働時間のピークというのは、年間に2200時間とか。今は1800時間を少し切るくらいで、アメリカよりも少し少ないくらいなんですよ。まあ日本の統計はそもそも信用できませんが……。