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お金持ちはなにを考えている?
——ぼくは常にお金がないんで、確かに何百億という大金があっても使い方がわからないと思います。小飼さんならどう使いますか?
小飼: お金を使うにはセンスがいると思うんです。例えばビル・ゲイツってすごいじゃないですか。マラリアを撲滅するとかっていう。あれは、すごいよね。格好いいというのか、脱帽というのか。あそこまでのセンスがあるといいですね。
——お金持ちっていうのは、どこかで欲望の上限があるんでしょうか? それとも無限にお金が欲しくなっちゃうものなんでしょうか。
小飼: 実は今の形のお金に関する1番の欠点というのは、満腹中枢はあっても、満金中枢というものはないんですよね。そう、ネガティブ・フィードバックがお金の世界にあまりないんですよ。
——税金とか取られるからやだなとか思いませんか?
小飼: 何と言えばいいのかな、ある程度お金に慣れた人というのは、際限なくお金を欲しくなるの。5000兆円とか言いたくなって来ちゃう。でも5000兆円なんていう現金はどこにもありませんから、残念!……というのは、さらにお金のことを知っている人であって。そうでない人というのは、やっぱり億千万よこせ! とか言っちゃうんですよ。
あと、お金の特徴の1つというのは、いくら持っていてもかさばらないということがあるんです。いくら持っていても、腐らない。だけど、これは物理的には有り得ないことでしょう?
——あ、そこはお金にとってすごく重要なことですね。腐らない。そのうえ利子がつく。だから昔は利子を禁止していたという話もありますよね。エイジングマネーみたいな時間で価値が減るような腐るお金を作っても、局所的にはうまくいっても大きなところではうまくいきませんよね。
小飼: それはどうしてかというと、お金というのは1種類ではない。1種類ではないということは、お金とお金の間に必ず為替が生じる。もしマイナス利子が制度的につくお金と、そうでないお金があったら、マイナス利子のお金は手に入れるや否や、腐らない方のお金を買っちゃうでしょう?
——うん。そうですね。
小飼: だから為替を通してどんどん流出しちゃうというふうに考えてるんですけど、皆が皆そうではないんですよ。たぶん人類の8割位、偏差値でいうと65から70くらいまでは多分そんなの気にしない、なんであの人もっとお金を欲しがってるんだろう? という人だと思うんですよ。でもそうでないお金持ちがいたら、食い荒らされちゃうんですよね。
以前、脳科学の本で読んだことがあるのだが、人間の脳は「得した」という快楽よりも「損した」という痛みのほうを強く感じるらしい。どうやら人間は「損」をしたくないし、スキあらば誰かよりも得してお金持ちになりたい生き物らしい。
このお金地獄から抜け出すためには宗教にでも入って解脱するしかないのだろうか……虚しいことである。
人類にはお金が必要なのか?
話をビットコインとお金に戻そう。
お金の正体というのは「約束」であり、だからこそ、その記録が必要であり、約束を守らざるをえないような仕組みをこれまでの人類はつくってきた。ところが今のビットコインというのは、国や軍隊や第三者や使わず、ブロックチェーンの上にお金を乗せた。そこが画期的だったというわけだ。
しかし……そもそも根本的な疑問なのだが、人類にはお金が必要なのだろうか? 貧乏なぼくにしてみるとむしろもうお金なんかない世界でもいいんじゃないかと思うのだが……。