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求めるのはカネじゃない「都市に住み、地方で副業」する若者が急増中

彼らは地方企業を救うかもしれない

地方企業での副業という選択

水野剛さん(35)は、大学進学を機に故郷の岩手県・盛岡を離れて17年。都内にある企業に勤めている。マーケティングの領域でがむしゃらに仕事をして、気がつけば35歳になっていた。都内の自宅と勤め先である高層ビルを往復する毎日。地元の盛岡を懐かしく思う機会が増えた。

……と言っても、これまで積み上げたキャリアを捨てたいわけではなかったという。結婚し子どもにも恵まれ、東京での生活が充実している。移住・Uターンへの憧れは、「無いものねだり」だと考えていた――。

そんな水野さんの抱えていたモヤモヤを解消したのが「地方企業での副業」だ。自身が培ってきたマーケティングの業務スキルを活かし、岩手県の八幡平(はちまんたい)市内の企業で副業を始めたのだ。今では月に2回現地に行き、社長の右腕として辣腕を振るっている。

都市部での生活を継続しながら、地元とも「副業」を通じて継続的に関わる。なにより自分を必要としてくれる社長にも出会え、都市部にいながら地域貢献もできることが嬉しかったという。

「人生が豊かになった」と話してくれた水野さんの笑顔が印象的だった。

八幡平で働く水野さん

私は現在「Skill Shift」という都市部人材と地方企業を「副業」でつなぐプロジェクトを主催している。水野さんのようなケースはいまや決して「特殊事例」ではない。広告などを使った集客は一切していないが、すでに1000人以上の登録者が地方企業での副業先を探している。こうした需要が極めて多いのだ。

こうした状況を参考に、「地方企業での副業」の現状についてレポートしたい。副業を実践する人々の新しい「価値観」、そして、地方企業が陥っている苦境とその窮状を打破するためのヒントをご紹介できればと思う。

「副業解禁」の本質とは

2018年は「副業元年」と呼ばれた。2018年1月、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表。これまでは事実上「副業禁止」の根拠となっていた「モデル就業規則」を改訂し、「副業容認」となったわけだ。

この流れを受け、社会トレンドに敏感な都市部のベンチャーや大手企業が続々と「副業解禁」を打ち出した。まさに大副業時代の幕開けだ。

 

さて、ここで読者の皆さんに注目してほしいのが「副業解禁」を打ち出した企業の銘柄だ。インターネットで検索すればそうそうたる「のれん」が並ぶ。新生銀行、ヤフー、ソフトバンク、資生堂、ロート製薬……。

全部は到底紹介しきれないが、「解禁」している超有名企業が目立つ。つまり「副業解禁」とは、「すでに一定の収入を得ている人材」に対して行われているのだ。