「お正月太り」は人類に備わった「生きるパワーの証」だった

食欲のしくみを制して食べすぎを防ぐ!
佐藤 成美

食べすぎないために脳をだます? ~脳はおいしさを覚えている~

おいしさは口や舌で感じるのではなく、脳で感じている。味覚や嗅覚、視覚、触覚、聴覚の五感をフルに活用して、食べ物の情報を脳に伝えている。では、食べすぎを防ぐために効果的な方法はあるのか?

前述の通り、脳はおいしさを覚えており、おいしさは食べるという行動を促す。おいしさは食欲を引き起こし、さらに食欲が食行動を支えているのである。

また、もしも何かを食べた後に下痢や吐き気など不快な思いをすると、その食べ物が嫌いになり、食べなくなることもある。内臓の不快感と味覚の情報が脳の中で合わさって、先天的に好きな甘い味でも嫌いになったりする。

このような後天的な味覚の学習には脳の扁桃体の機能が関わる。偏桃体は味覚をはじめ、嗅覚や視覚などあらゆる五感の情報が集まるところで、「快」「不快」「好き」「嫌い」などの価値を判断している。内臓の感覚情報も集まってくるので、偏桃体の中でそれらの情報が処理され、その味を嫌うように記憶づけられている。

また、味は同じでも、色が違うだけで食べ物はおいしそうに見えたり、まずそうに見えたりする。一般的に赤やオレンジ色など暖色系の色はおいしそうに感じ、青や紫色など寒色系の色はあまり感じない。

【写真】暖色と寒色
  どちらが食欲をそそるかは一目瞭然だ photos by gettyimages

色は、食欲をコントロールする手段かもしれない。

また、実験マウスのところで述べた、食欲を抑える「レプチン」のメカニズムと、それに関わる酵素などの研究が進んでいる。将来的には、そのメカニズムを利用して食欲をコントロールできるのではないだろうか。

その日を待つことにはしながら、とりあえずやっぱりお正月はおいしいものを食べますか!

【写真】お正月はおいしいものがなければ!
  お正月はおいしいものがなければ! photos by gettyimages

「おいしさ」の科学 素材の秘密・味わいを生み出す技術

佐藤 成美 著

1000円(税別)

うま味成分に関する研究が注目されるなど、「食」の科学的な研究が進んでいます。「食の科学」分野で活躍中の大学研究者やメーカー研究者から取材した、「食」分野での研究の最前線をわかりやすく紹介します。