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天皇の執刀医が、「本業でない仕事」でお金を得ることをためらうワケ

天野篤医師が印税を被災地に寄付する訳

天皇陛下の手術を成功させたプロフェッショナル

僕の仕事は書籍の編集である。年金を得ながら働いているが、今年も8冊ほどの本に携わることができた。

その著者のなかで、印税をすべて寄付されている方がいる。

天野篤さん(63歳)だ。心臓血管外科医で、順天堂大学医学部附属順天堂医院の院長である。2012年2月に行なわれた、天皇陛下の心臓バイパス手術の執刀医として知られる。 

 

天野さんの心臓バイパス手術は、心臓を止めずに行うことが多い。拍動している状態で、心臓の表面を走る血管・冠動脈の狭くなった部分に、体の別の血管を用いて迂回路をつくる。人工心肺(ポンプ)を使わない「オフポンプ術」という術式で、陛下の手術もこの方法がとられた。

これまでに執刀した手術症例は8000例を超えるプロフェッショナルだけに、本に対する考え方も通常の著者とは異なる。

「僕は新聞や雑誌に文章を書いたりしますけど、それは本業ではない。まとまって本になるのはうれしいけれど、プロでないのにお金をとっていいのかな、という思いがいつもあるのです」

と、天野篤さんは話す。

                天野医師の近影

天野さんは2018年に2冊の本を出した。

7月に出版した『佳く生きる』は、週刊新潮で連載したコラムをまとめたもの。佳く生きる――とは「長生きできてよかった」と、心から思える生き方で、健康寿命を延ばすための視点で53本のコラムをまとめた本である。

もう1冊は『100年を生きる 心臓との付き合い方』というもの。こちらは10月の出版。日刊ゲンダイで2014年から連載されている「心臓病はここまで治せる」に加筆し、110歳までトラブルのない心臓を目指す指南書だ。