Photo by iStock

「それはデマだ!」の主張自体がデマ…という事態にどう向き合うか

互いに「デマレッテル」を張り合う時代

多重化したデマ

デマが蔓延る世の中になった。

このような時代のことを、「ポストトゥルース」と呼ぶことがある。「真実」や「事実」が、世論を形成するときに、力を失ってくる時代の状況のことである。デマやフェイクニュースが頻繁に流れてくるので、何が本当で、何が嘘なのか分からなくなる。

だから、デマやフェイクニュースに対抗するために、デマを訂正する記事や、事実確認(ファクトチェック)をする記事などが書かれることになる。事実確認をしてくれるこれらの記事は、デマやフェイクニュースに惑わされやすい現在に生きるぼくらにとって、大変ありがたいものである。

〔PHOTO〕iStock

が、時折、「デマを訂正する主張それ自体がデマだ」、という事例に出くわすことがある。「〇〇はデマだ」と言われて、多くの人は「な~んだ、そうだったのか」「〇〇を報じたメディアは信用ならない、嘘つきだ」と思いがちであるが、「あれはデマだと判明しました」「科学的にはあれは事実ではありません」という、いかにももっともらしい顔をした記事自体がデマだ、というケースが随分と多いのだ。

ツイッターを見ていると、このような多重化したデマ、巧妙なデマに、知識人や専門家すら引っかかっているケースが随分と見受けられる。「リテラシー教育でなんとかなる」という意見があるが、リテラシーの面から言えばそれなりに高度なはずであろう人々がデマを見抜けないのだから、多分そんなに楽観視はできないだろう。

「ポストトゥルース」時代の何を信じていいのか分からない底が抜けた状態は、そう簡単に対処できるものではない。その深刻さを直視してもらうために、最近あった実例を紹介したい。

 

液体ミルクをめぐる事件

取り上げるのは、液体ミルクデマ騒動である。ご存じない方も多いと思われるので、経緯を多少詳しく紹介していくことにする。

2018年9月8日に、北海道胆振東部地震が起こった。停電、地すべりなど、北海道では近年稀に見る大きな被害を起こした地震であった。それを受けて9日、東京都は道の要請を受けて、備蓄されてあったフィンランド産の「液体ミルク」を送った。

「液体ミルク」とは何か。赤ん坊に与える粉ミルクの液体版、と考えてほしい。聞き慣れないのは、日本ではまだ一般に流通していないものだったからだ。2018年8月8日に厚生労働省が省令を改訂し、国内でも製造・販売が可能になったばかりのものである。粉ミルクと比較して、煮沸消毒などをしなくて良いので、水や消毒のために必要な資材を入手しづらい緊急時には有用であると言われている。

この液体ミルクを巡って、「デマ」に関係する記事が飛び交った。興味深い内容なので、煩雑かもしれないが、紹介させてほしい。