夜空に浮かぶ「おたまじゃくし・えび・くらげ」を巨大画像で眺めたら

多様な形で「銀河の生い立ち」がわかる
臼田-佐藤 功美子 プロフィール

その第一期データが、2017年2月に全世界に公開されました。2014年から21ヵ月分、約62夜分のデータが含まれており、満月600個分を超える広さの天域をカバーしています。総データ量はなんと80テラバイト。一般的なデジタルカメラ画像の約1000万枚分に相当します。

この本格的な天体画像データを、どなたでも手軽に楽しんでいただくため、2018年3月に「HSCの画像ビューア」サイトが公開されました。このビューアは「宇宙版Googleマップ」のようなもので、研究者用に開発されたものに星座線と星座名を加えたり、設定画面をシンプルにしたりして、非専門家が使いやすいようしたものです。

メニューバーに加えられた、開発者による「オススメ天体」を選んで、天体の「名所巡り」をすることもできます。

このサイトにアクセスすると、初期画面では多くの緑色の正方形が表示されています。HSCの画像はこの枠内に隠れているのです。

そこにカーソルをおき、マウスやタッチパッドを使ってズームインすると、画像が見えてきます。さらにズームインを続けると、星座を形づくる星々が見えない暗い領域からも、ものすごい数の小さな点々があふれ出るように見えてきます。

まだまだズームインできます。すると、この小さな点ひとつひとつが、銀河であることがわかるはずです。

近くにあって形がわかる大きなものや、遠方にあって小さく淡い赤い点にしか見えないものまで、宇宙は銀河であふれているのです。

HSCの画像ビューアの初期画面と、ある観測領域の枠内を拡大したようすHSCの画像ビューアの初期画面と、ある観測領域の枠内を拡大したようす Photo by NAOJ

宇宙の歴史を紐解く太古の目

サイトのメニューバーにある「オススメ天体」を見てみましょう。天の川銀河内の近傍の天体から、遠方にある宇宙初期の天体まで含まれています。

前者の代表として、すばる望遠鏡の名前の由来となった、おうし座のプレアデス星団「すばる」(距離410光年)や、太陽の10倍以上の重い星々がうまれているオリオン大星雲(距離1500光年)が挙げられます。いずれも「冬の星空」といえば名前が挙がる有名な天体ですが、ここでは後者に含まれる珍しい「オススメ天体」をどんどんご覧に入れたいと思います。

たとえば「重力レンズ天体」。重力レンズ効果とは、光源である遠くの銀河からの光が、手前にある別の銀河の重力によって大きく曲げられる現象です。その結果、遠くの銀河からの光が複数の経路を通り、光が集まって明るく見えることがあります。

光を曲げる銀河、つまり重力源がレンズのような役割を果たしているように観測されるため、このような名前がついているのです。

光源と重力源との位置関係によっては、同じ光源から複数の像が見えたり、弓状に変形した像が見えたり、リング状の像が見えたりします。リング状の像が見えるのは、観測地点である地球から見て、光源が重力源の真後ろにある時です。

おとめ座の方向にある「ホルスの目」も、きわめて珍しい重力レンズ天体です。なにしろ光源が2つあります。そのユニークな見た目から、古代エジプトの神聖な神の目にちなんで名付けられました。

ホルスの目ホルスの目の疑似カラー画像 Photo by 国立天文台

目玉に相当する中心のオレンジ色の天体が重力源で、70億光年の距離にある手前の銀河です。そのまわりのリング状の構造には、内側に赤っぽい円弧状の天体が、外側に青っぽいリングが見られます。

これは光源である背景の銀河が2つあるからです。赤っぽい銀河が90億光年、青っぽい銀河が105億光年の距離にあることが、南米チリの望遠鏡を使った観測でわかりました。