2018年の一皿は「サバ・サバ缶」! カン動の成功はなぜ起きた?

ギョ! バカ売れ缶詰に学ぶ儲けの極意
黒川 勇人 プロフィール

サバ缶の下積み時代

大きな出来事は2011年3月の東日本大震災だ。

 

余震と停電が続く中で、冷蔵の必要がなく、開ければそのまま食べられる缶詰の需要が高まり、一時は小売店から缶詰の姿がほとんど消えたほどだ。このときは缶詰全体が見直されたが、定番商品のサバ缶はボリュームもあり、味付けがシンプルで判りやすいことから注目された。

サバの持つ豊富な栄養素が評価され始めたのは震災以降。中でも、13年に放送された朝日放送「名医とつながる!たけしの家庭の医学」で、サバ缶を食べると「やせるホルモンが分泌される」と紹介したのが大きなきっかけになった。

やせるホルモンの正体はGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)というやつ。青魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)を体内に取り込むと、腸の中でGLP-1が分泌される。その働きは食欲をコントロールし、血糖値の上昇をゆるやかにする。すなわち、やせる効果が期待できるのだ。しかもEPAは体内で作れないので、食事などで外から取り込まないといけない。

この番組以降、あらゆるメディアで「サバ缶は健康にいい」と持ち上げられた。EPAと同じ必須脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)も豊富で、こちらは血液と血管を健康に保ち、脳の働きを活発にすると言われている。中高年にはすこぶる魅力的なのである。

こうした話題が10年の間、テレビやラジオ、雑誌、ネットで繰り返し取り上げられたことで認知が広がり、ついに現在のブームに至ったのだ。サバ缶には、実はこんな長い“下積み時代”があったのであります。

ちなみに、サバ缶には中骨が入っているからカルシウムも摂れる。たとえばサバ水煮缶を食べたときのカルシウム摂取量は、家で煮て食べたときの37倍だ。サバだけに38倍だったら憶えやすいのだけど、データでサバを読んではいけません。

表面に浮かぶ脂はEPA・DHAの宝庫だ。photo by Hayato Kurokawa

画期的な製造方法

サバ缶が栄養豊富な理由は2つある。1つは原料の鮮度の良さだ。

各メーカーは、早朝漁港に水揚げされたサバを買い付け、基本的にはその日のうちに缶詰にしてしまう(冷凍原料は別。後述します)。

小売店に並ぶ生鮮のサバが、漁港から冷蔵倉庫、冷蔵倉庫から売り場、売り場から家庭の冷蔵庫という流れを辿るのに比べると、いかに加工までの時間が短いかが判る。魚介缶詰を造る工場がすべて漁港近くにあるのも、輸送時間を少しでも短くして鮮度を保ちたいからだ。

もう1つの理由は製造方法。サバ缶は頭、内臓、尻尾などの不要部分を切り取り、生のまま缶に詰める。調味液(塩水など)を注ぎ、中の空気を抜きながら完全密封したあと、缶ごと大きな釜で加熱する。

何となれば、生のサバが缶の中で調理されるわけだ。あらかじめ煮たサバを詰めているわけじゃないのであります。

DHAの量を生サバと比べた場合、100gあたりでは、

生サバ:970mg
缶詰:2400mg

というデータがある。生より缶詰のほうが栄養が多いという、誠に不思議な現象だが、これも製造方法のおかげ。DHAは脂の一種なので、空気に触れると酸化してしまう。それが缶詰の場合、新鮮な切り身を缶に詰めて真空状態にするため酸化はほぼ起こらない。EPAも同様だ。