完全な避妊はない。予定しない妊娠で窮地に立たされる女性は想像以上に多い。不幸な妊娠を避けるためにもアフターピルのOTC化は急務といえる。Photo by iStock

「アフターピルが市販されると女性の性が乱れる」という大嘘

クリスマスに無料配布する国もある

アフターピルで性が乱れる」はありえない!

診療の際は「アフターピル服用後に月経がなかったらどうするかということはもちろんですが、コンドームが外れたケースでは性感染症をもらっている可能性があることも伝え、検査を受けることを勧めます。

また、アフターピルを毎回使うよりも、避妊のため低用量ピルを飲んでおいたら? と今後につなげることも大事。さらに、子宮頚がんの検査を受けているか、HPVワクチンは打っているかなども同時に伝えるようにしています」と久住医師。こうした取り組みは、ほかの医師も行ってほしいと思うし、できるのではないか。

アフターピルが入手しやすくなると性が乱れるのでは? と懸念する声もある。が、「同じ患者が何度もアフターピルを求めるケースは、まずない」とのこと。

「もしあるとすれば、性交渉目的よりも、家庭での避妊拒否のDVを誰にも相談できないでいるケースや転売目的などが考えられると思います。その場合は、見過ごさずに、何らかの対応が必要だと考えています」(久住氏)

実際、どんな女性がアフターピルの処方を求めて受診に来ているのだろうか。久住医師が教えてくれた事例は下記のようなものだ。

・避妊に失敗した高校生が、友人に付き添われ受診

・夫が避妊に応じない。経済的にこれ以上の出産は難しく、受診

・会社員の女性。休日に避妊を失敗したが、仕事が忙しく平日に受診できないため、オンライン処方を利用

・地方の女性。産婦人科を受診するだけで「妊娠した」と噂が立つので困ると、オンライ処方を利用。薬は自宅には送らず、郵便局留めで送ってほしいと依頼

通常は産婦人科を受診し、アフターピルを処方してもらうことが多いが、「薬局に行ったら薬がなく取り寄せと言われた(アフターピルの効果を発揮する期間が過ぎてしまい、意味がない)」、「結婚して、子供を産みなさいと、医師に説教された」など、不快な思いをするケースも少なくないそうだ。オンライン処方やOTC化が進めば、忙しさや恥ずかしさ、気まずさなどから受診のタイミングを逃してしまうなんてことはなくなる。救われる人は増えるはずだ。

 

SNSで取引される怪しいアフターピル

現状、アフターピルを休日でも処方してくれる病院はいくつかあるが、都心に集中している。困ったときは、オンライン処方をしてくれる病院をインターネットで探すという手がある。ただ、医療機関が見つからない場合、SNSなどで「アフターピル譲ります」と呼びかけるアカウントに手を出してしまう人も……。

しかし、これは非常に危険だ。久住医師は「医療機関でないものの中には、違法に輸入された薬も数多くあり効果は不明であり、体に有害な成分が入っている可能性も。薬は味や匂いで真贋の見分けがつかず、サプライチェーンを信頼するしかない。身元の分からない人から薬を買うなど、危険としか言いようがない。アフターピルはちゃんとした薬を飲んでも効果が100%でないから、効かず妊娠してしまっても、ニセ薬だったのか分からない。決して手を出さないように」と呼びかけている。

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