欧米に大きく遅れるアフターピルの普及

アフターピルが日本で認可されたのは2011年と、まだ最近のことだ。日本では、「ノルレボ」という薬が認可されていて、性交渉後72時間に服用することで妊娠の可能性を下げることができるとされている(避妊効果は100%ではない)。ホルモン剤の一種で、卵子の排出を止める、子宮内膜に受精卵が根付く(着床)のを止めるなどの作用がある。

日本で始めて認可された緊急避妊薬の『ノルレボ錠1.5㎎』は、2016年4月にあすか製薬から発売になっている。

避妊の効果を得るには、早く服用するほどいい。例えば、金曜の夜にセックスした場合、ノルレボは月曜夜までに服用しなければならない。時間との戦いなのに、日本では医師の処方が必要であり、薬へのアクセスが非常に困難になっている。

地方などで、産婦人科が少ない、土日に病院が空いていないという場合、「どうすりゃいいの!」となるのは当然で、こうした不便さを解消するため「OTC化が必要」という議論が起きているのだ。

欧米では緊急避妊薬が、OTC薬として薬局で広く販売されている。英国では、クリスマスにコンドームと緊急避妊薬が無料で配られることがあるそうだし、アメリカのある大学では大学の自動販売機で購入できるそうだ。どの国もアフターピルへのアクセスを向上させ、望まない妊娠や中絶を減らすことが主な目的だ。このような状況を見ると、なぜ日本はこんなにも遅れているのかと疑問符がつく。

今回、OTC化が見送られた理由として「経口避妊薬に対する知識や性教育が不足している」「薬局で薬剤師がきちんと説明できるかどうか困難」などの意見が出されたというが、薬剤師からは「勉強会などをきちんと行い、役割を果たすことを望んでいる薬剤師もいるはずだ」という声も上がっている。

オンライン処方は女性たちの駆け込み寺

18年9月1日、久住英二医師が理事長を務めるナビタスクリニック新宿(医療法人社団・鉄医会)は、アフターピルをオンライン診療のみで処方する窓口を開設した。

「アンメット・メディカルニーズ(満たされていない医療)を提供したいと考え、日本では、入手のハードルが高いアフターピルのオンライン処方がそのひとつと考えた」と久住医師。アフターピルは初診は対面診療が原則であるため、厚生労働省は不適切との立場だが、現状、特にペナルティなどはないという。

「国内で認可されているノルレボは、売上ベースで年間11万個売られている。対して、日本国内の人工中絶は年間におよそ16万8千件平成28年度・厚生労働省)、1日にするとなんと国内の中絶数は460件にものぼります。アフターピルの処方数よりも中絶件数が多いというのは、どうみても不自然。緊急避妊薬にリーチできない人が、いかに多いかをあらわしていると思います」

ちなみに、日本人の三大死因のひとつである脳血管疾患の死亡者数は年間約11万人。それよりも、日本では中絶件数の方が圧倒的に多いのだ。

久住医師によると、アフターピルのオンライン診療を開設後、全国から1日数件の問い合わせがあり、連休明けなどは1日5、6人にアフターピルを処方することもある。「やはりニーズはあったと実感している」という。

オンライン処方では、薬を宅配便で届ける必要があるため、同クリニックでは、国内未承認だが、性交後120時間(丸5日間)以内の服用で効果がある「ella(エラ)」というアフターピルを輸入し、処方している。

日本ではまだ未承認だが、性交後120時間以内服用まで対応できる『ella』。海外では人気が高い。(Photo by Spiegl/ullstein bild via Getty Images)

「未承認薬といっても、欧米などでは、ellaは薬局で入手できる薬。世界保健機関(WHO)も、緊急避妊ピルを服用できない医学上の病態はなく、服用できない年齢もないとしています。副作用は頭痛が18%、胃の痛みが12%、吐き気が12%などと報告されていますが、いずれも一過性のもの。むしろ、望まない妊娠をする体や気持ちへのリスクの大きさと比べれば、副作用の相対的なリスクは非常に小さい。必要な情報はオンラインでのやりとりで十分説明でき、問題ないと判断した」という。