知らない間に、あなたが「見知らぬ空き家の所有者」になる恐れアリ

相続放棄にひそむこんなリスク
野澤 千絵 プロフィール

また、土地の境界が確定していない場合には、専門家に依頼し、隣接した土地の所有者や道路管理者(自治体等)等と境界について協議し、合意をもらう必要があり、土地の境界確定に多大な手間や時間がかかる。

特に、近年では、隣接した土地の所有者が不明(連絡が取れない場合も含む)で境界の確定が困難なケースも問題になっている。

こうした相続未登記の状態の解消は、着手する時期が早ければ早いほど、現在の所有者と協議すべき親戚との人的なつながりが途切れておらず、協議すべき親戚や近隣住民等も近隣に居住していたり、ご健在である可能性が高いため、相続が発生した「後」よりも「前」の方が、比較的スムーズに解決できる可能性があるというメリットがある。

また、分譲マンションの場合では、実際に居住し、区分所有者でもある親であれば、現在、マンションの管理組合や維持管理活動がどのような状況になっているのかをそれなりには知っているはずである。

もし、マンション全体で管理費や修繕積立金などの滞納金額が積み上がっているにもかかわらず管理組合が対応していない場合など、現時点でマンションの維持管理状況が将来の売却可能性に影響を与えかねない状況に陥っているのであれば、区分所有者の親を通じて、管理組合によるマンションの維持管理活動に多少なりとも関与・サポートするという姿勢も必要になってくるだろう。

マンションの維持管理についても、問題発生後、より早い段階の方が解決に向かいやすく、影響を最小限にとどめることが可能になる。

切り取って書き込める「住まいの終活ノート」!

家族や親戚とともに考えよう

特に、今後大問題となる「民間市場で流通性が低いエリア・物件」については、筆者が全国各地の事例を調査した結果、その地域ならではの様々なニーズを掘り起こし、住まいやその土地の使い手との橋渡しをしてくれる担い手を見つけられるかが鍵となっていた。

近年、地域によっては、民間企業、地域に根差したまちづくりNPO、自治体などの存在が大きく貢献している先進事例も見られるようになった(詳細は拙著を参照して頂きたい)。

こうした地域の情報は、相続が発生する「前」であれば、地域とのつながりがあるため、ご近所同士の情報網を駆使して、自分たちの状況に合った相談先探しに時間をかけることができるというメリットもある。

とはいっても、相続が発生した「前」に、住まいを「終活」するメリットがあることはわかってはいても、なかなか踏み出せないことが多いだろう。

そこで、拙稿を読んだ後に是非、この年末年始、実家に帰省される際、「実家などの住まいを『終活』するために何が必要なのか?」について、家族や親戚で考える機会をもうけてはいただけないだろうか?

まずは、実家や街の状況を実際に確認してみると良いだろう。また、こうした実家とその周辺の街の状況を確認していくと、ある程度、民間市場での流通性があるかも見えてくるだろう。

特に「民間市場での流通性が低いエリア・物件」の可能性がある場合には、まだ時間的・精神的な余裕がある早い時期にこそ、住まいを「終活」することに踏み出すことが重要になる。

では、住まいを「終活」するには具体的に何をどうしていけばよいか――それを次回の拙稿(1月7日公開予定)で考えていくことにしたい。


(*1)相続放棄は、基本的に預貯金などのプラスの財産も負債などのマイナスの財産も全て放棄することになる。相続放棄をするには、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」(民法915条第1項)に、家庭裁判所に申し立てを行い、正式に受理される必要がある。なお、相続人同士の相談で、自分は全ての相続分をほかの相続人に譲渡(放棄)するといった意思を示す書面や遺産分割協議書に押印しただけでは、法的には相続を放棄したことにはならない。
(*2)親戚の見知らぬ空き家の所有者だと知らされた際、相続放棄を希望する場合、相続放棄の手続き期間は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」であるため、一般的には、先順位の相続人が相続放棄したと知ったときから3ヵ月以内に、家庭裁判所に自らの相続放棄の手続きをする必要がある。