「色んな人たちと交流し、渡りあっていくのは『言語能力』だけじゃない」ということを実感しました。基本的な単語や文法はもちろん必要です。でも、「英語の勉強だけ」では交流はできません

ちなみに、今でも私の英語の語彙数は多くありません。先日FBでボキャブラリー診断をやっている知人がいて、私も挑戦してみました。ネイティブの人は2万~3万ワードだと言われている中、知人の方は1万7000ワードという素晴らしさ。

しかし私は1万ワードを切っていました。20年以上NYに住み、プロのスピーカーをやっているのに、少ないのです。お恥ずかしいことですが、「英語はボキャブラリーだけではない」ことがお分かりいただけるかと思います。

英語能力よりも、「伝える内容と力」

では、英単語の数よりも大切なのは何でしょうか。それを痛感したのが、MBAの留学に挑戦したときのことでした。

大学卒業後、運と縁とが重なり、NYにある伊藤忠商事のアメリカ本社に就職しました。4年目に一度MBA入試を受けて不合格。5年目で再挑戦しました。NYU(ニューヨーク大学)の合格ラインにかろうじてひっかかったのですが、合格通知が来ない。調べてみると、ギリギリの点数ゆえ、補欠のリストに入っていました。

ビジネススクール入学希望者対象に行われる適正テストGMATの点数が620点。当時NYUでは690点が合格の目安でした。特に低かったのは英語の点数。そこで、改善すべく7回受け、最終的に720点を取ることができました。

大学卒業直前のときの信元さん。自信を取り戻して就職、そこからビジネススクールでのMBAに挑戦した。写真提供/信元夏代

合格した理由は「テスト」ではなく「プレゼン」

ところが、まだ合格通知が来ないのです。色々考えた末、自分のプレゼンテーション資料を作り、担当者に直談判しようと考えました。

NYUのアドミッションオフィスで待ち構えたのは、3月のことです。もちろんアポはないし、担当者が来るか来ないかもわからない。いま考えれば無謀かもしれませんが、それしか選択肢はありませんでした。40分ほど立っていたでしょうか。運よく担当者のジュリアが出てきたのです。私は偶然を装い彼女に話しかけて、自分をプレゼンしました。

「ここには私が仕事で成果をあげたものがまとまっています、私は意見の異なる人たちをまとめることができますし、NYUのMBAチームプロジェクトでもこの力を発揮できます。だから入学させてください」

30秒で話そうと決めていました。どの順番で何を話すかを何度もシミュレーションし、その一瞬に賭けました。

その2日後、入学担当者から勤務先オフィスに電話がかかってきて、合格を知らされたのです。

大切なのは英語力そのものよりも、積極的に動き、いろんな人を巻き込んでいくコミュニケーション能力でした。

2回目の挫折と発見

ところが、それだけ積極的に動き、結果を出した私がまたもや劣等感の塊になりました。

MBAに入った初日。クラスメートがたくさんいて、自己紹介をしていきます。それが、みんなとても面白い。私も何を言おうか考えながら話し始めましたが、頭の中で考えていたこととは全然違うことを冒頭から口走ってしまい、固まってしまいました。失望感と共に自己紹介を終えました。そして、「やっぱりプレゼンは嫌!英語嫌!」と思ってしまったのです。留学した時と同じです。

もしかしたら日本人の多くは、完成形を見せたいと思いがちではないでしょうか。私はまさにそうで、未完成を見せたらいけない、きちんと話せないといけない、間違っちゃいけないと思い、固まってしまったのです。ですからチームプレゼンでは一番短いパートを担当し、言いたいことを丸暗記していました。